2012年8月27日月曜日

いま「慰安婦」問題から見えてくるもの

 今日、子どもと教科書全国ネット21から、NEWS VOL.85(8月15日付)と資料・チラシが届きました。
 一番目についた記事が、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」館長の池田恵理子さんが書かれた「いま『慰安婦』問題から見えてくるもの」でした。
 最近、竹島問題をめぐって、韓国による強硬姿勢が日韓関係を緊張化させていますが、池田さんのエッセイを読んで、日本政府とマスコミが「慰安婦」問題に 真摯に向き合わず、戦争犯罪の真実を隠蔽しようとしてきた問題が韓国の国民の反日感情をかっていることが良くわかりました。
  2000年12月に開かれた日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」を取材したNHKの報道番組が放送直前に改ざんさせられ、裁判にもなった事件については当時私のブログでも紹介しました。http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2005-01-15
 池田さんは、表題のエッセイの中で、「慰安婦」問題をめぐる日本の戦争責任の取り方が、日本の民主化のものさしになることを次のように述べています。
 ~2011年、「慰安婦」問題は久しぶりに国際的にもスポットを浴びたが、日本のメディアの大半は政府の主張を追認するだけだった。ソウルで1000回 目の水曜デモが行われた12月14日には、東京でも1300人の市民が集まり、外務省を「人間の鎖」で囲んだ。そこに右翼が押しかけ、凄まじい罵声でヘイ トスピーチを浴びせた。マスコミ各社は取材にはやって来たものの市民の声は取り上げず、韓国の「平和の碑」を批判して「日韓のナショナリズム対決」と煽る ばかりだった。ここには日本の右傾化とともに、戦争の歴史や「慰安婦」問題を学ぶ機会がなかった若い記者たちの限界を見る思いがした。・・・・(中 略)・・・・ 日本が過去の戦争責任に向き合い、「慰安婦」被害の事実を認めて謝罪と個人賠償を行わないかぎり、国内では戦争加害の記憶を封殺する勢力を 増長させ、国際社会からは「戦争責任を取れない国」として蔑まれ続けるだろう。自国の戦争責任に向き合える社会が実現するのは、日本が真の民主化を達成し た時である。私たちはいかに困難であろうとも、この道を歩み続けるしかない。(いけだ えりこ)~
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2012年8月25日土曜日

子どものいのちと人権が守られる学校、社会を築くために

 遅くなりましたが、8月17日から19日まで、神戸市で開催された「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい 教育研究全国集会2012」の報告です。
 1日目は、神戸国際会館で開会全体集会が開かれ、オープニングで藤波心さんが原発・放射能の危険から子どもを守る教育のあり方を訴え、また脚本家の渡辺 あやさんが「作ること、学ぶこと」と題して講演され、創作・表現することをとおして「だれかの生きる力になりたい」という思いを話されました。全体集会の 後、7つのフォーラムに分かれて、子どもと教育をめぐるさまざまなテーマでシンポジウムを行ないました。私は、「崩れさる『原発安全神話』から見えてくる ものと教育」の受付係をしました。DSC00278.JPG
 2日目・3日目は、教科ごとあるいは課題ごとの分科会が開かれ、実践レポートをもとに交流・討論が行なわれました。また、2日目の夜には緊急シンポジウ ム「子どもたちのいのちを守り、人間として大切にする学校・地域・社会を考えるシンポジウム」が開かれ、中学生いじめ自殺といった痛ましい事件を繰り返さ ないために、教職員、父母・住民、研究者がそれぞれ力を尽くし、声を上げ、協力し合うことが大切だと語り合いました。
 最後に実行委員会の「アピール」全文を紹介します。
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「教育のつどい2012」アピール
子どもたちのいのちを慈しみ人間として大切にする学校・地域・社会を創るために
力を合わせましょう!
- 父母・国民、教職員のみなさんに呼びかけます -

 8月17日から3日間、兵庫県神戸市内で開催した「教育のつどい2012」は、本日すべての日程を終えます。全国からご参加いただいた、のべ7000人 の父母・国民、教職員のみなさまと、地元兵庫県のみなさま方の協力に深く感謝申し上げます。また、メッセージをいただきました兵庫県内の多くの自治体首長 のみなさまにも心よりお礼申し上げます。
 東日本大震災と東電福島第一原子力発電所事故から1年半になる2012年8月。17年前に阪神淡路大震災の甚大な被害を受けたここ神戸市でも復興のシン ボルと言われてきた神戸市国際会館を開会全体集会の会場として「教育のつどい」が開催できた意義をかみしめ、ともに喜びあいたいと思います。
 「教育のつどい2012」は、子どもと教育、子育てにかかわる多くの人々が心から希求する「子どもたちのいのちを慈しみ、人間として大切にする学校・地域・社会について語り合い、深め合った3日間となりました。
 昨年10月の滋賀県大津市における中学2年生の自殺事件。子どもたちのいのちが何よりも大切にされなければならない学校で、なぜこのようなことが起きて しまったのか、「教育のつどい2012」では開会全体集会の代表委員挨拶と討論の呼びかけをふまえて、多くの分科会や教育フォーラムで真摯な討論と交流が 行われました。その中で語られ、共感的に受け止められたのは、次のような点でした。
 「いじめ」を、暴力や人権侵害の問題としてとらえること、教職員が、子どもたちのいのちと人権を守ることを何よりも大切にする感覚をとぎすますこと、そ れはいじめられている子どもに対してだけではなく、いじめている子どもにも同様であること、子どもの中にこそ解決の力があり、それを引き出すことが大切な こと。さらに、保護者、教職員が敵対関係に陥るのではなく、ともに力を合わせた学校づくり、地域づくりが求められていること。そして、「競争と管理」「自 己責任」を基調とした新自由主義的な「教育改革」が子どもたちばかりでなく、親や教職員など子どもに関わる人々に多大なストレスを与え続けており、この抜 本的な改善なくしては根本的な解決は難しいことでした。
 こうした討論をふまえて、それぞれの地域でさらに議論を深めていくことが切実に求められています。
 「教育のつどい2012」は、原発・震災にかかわっては、フォーラムでの討論とともに、19の分科会に50本を超えるレポートが出され、具体的な教育実 践やとりくみについて旺盛に議論を行いました。放射能や原子力発電所について真理・真実を子どもたちと語り合うとともに、被災地の現実を見つめ、子ども自 らが自主的に行動する姿は、まさに子どもとともに未来を創るとりくみです。
 教育目標まで首長が決めるなど、橋下・大阪「維新の会」による教育へのあからさまな介入や、戦後民主教育と民主主義を根本から否定する動きについても、 フォーラムや分科会の中で報告と討論が行われました。これに対して、子どもと父母、教職員、地域住民のねがいに立った運動が元気に繰り広げられていること が口々に語られ、そのねがいを生かした学校と地域づくりこそ大切であることが確かめ合われています。
 再稼働に反対し、官邸前行動、国会包囲、原発ゼロ集会などに、10万人、20万人の人々が全国から集まり、全国各地で多彩な集会が催されています。未来 を生きる子どもたちのいのちを守りたいという声、いのちを最優先する政治を求める共同が、歴史を動かす大きなうねりとなり、その中に子どもと教育を守り支 える力があることを私たちは改めて確認しました。
 全国からご参加いただいたすべてのみなさん、子どもたちと教育の未来に心を寄せるすべてのみなさん。今こそ、子どもたちのいのちを慈しみ、人間として大切にする学校・地域を創るために、力を合わせましょう。

 2012年8月19日 
「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい 教育研究全国集会2012」実行委員会

2012年8月9日木曜日

映画「夏の祈り」~忘れてはならない、あの日の記憶 1945/8/9 am11:02

この夏、見たい映画があります。それは、ドキュメンタリー映画『夏の祈り』(監督:坂口香津美/95分/2012年)です。 T0013272p.jpg

舞台は、長崎にある被爆高齢者のための特別養護老人ホーム「恵の丘長崎原爆ホーム」。ここで生活するお年寄りたちは、訪れる子どもたちに自らの被爆体験を 語り継ぐために、年に数度「被爆劇」を上演しています。この映画は、劇を上演するお年寄りたちの記録を軸に展開。約2年間におよぶ撮影は、人生の晩年を迎 えている被爆者の日々の営み、原爆によって運命を変えられたさまざまな人々の命の輝きを鮮烈に伝えます。

 東京では、渋谷のUPLINKで8/11(土)~ 連日10:30/12:30/16:30 上映。http://www.uplink.co.jp/movie/2012/544
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(「ストーリー」から)http://www.natsunoinori.com/
 原爆ホームでは、入居者(被爆高齢者)がそれぞれ被爆の記憶を忘れないように、また原爆の悲惨さを後世に伝える目的で、職員がそれぞれの利用者とともに 被爆を受けた場所に案内し、聞き取り調査を行っている。本多さんは被爆するまで過ごした児童養護施設の仲間や親代わりだったシスター、カトリック教徒が眠 る墓地を年に一度、訪れる。
 爆心地から約1キロの地点にある長崎大学の構内の一角に、多数の被爆者が眠る場所がある。米軍の手により、原爆投下直後より調査収集された急性被爆症患 者の病理標本だ。長崎大学大学院原爆後障害医療研究施設の助教授、七條和子さんは、被爆者の病理標本から「内部被爆の人体に及ぼす影響」を調べている。原 爆投下から60年以上たった今でも内部被爆により被爆者の病理標本の細胞で放射線を出し続けている事実は衝撃的だ。
 長崎大学病院の医師、長井一浩さんは、原爆ホームで主治医を務めながら、長崎大学の准教授、鈴木啓司さんとともに、被爆者の血液から造血幹細胞を取り出し、被爆により傷ついた遺伝子が人体に与える影響を研究している。・・・・

2012年8月6日月曜日

ナガサキ奇跡の少女、67年目の再会

今日(8月5日)、TBSのNEWS23クロススペシャルで、長崎原爆投下の翌日、焼死体のそばで立ちつくす少女の写真のご本人に、女優の綾瀬はるかさんがお会いして、当時の体験をお聞きする番組を見ることができました。
 私が原爆の日が近くなると毎年のようにめくってみる写真集『ノーモア ヒロシマ・ナガサキ』にもその写真は掲載されています。(2005年、日本図書センター)
 当時15歳だった少女は、龍智江子さん(82歳)で現在福岡県にお住まいです。智江子さんは、8月9日の朝、母に代わって父親と出かけたために、原爆の 被害から逃れることができましたが、爆心地から約300メートルの場所にあった自宅は、跡形も無くなり、母と弟は帰らぬ人となりました。写真に写っている 黒焦げの遺体は、智江子さんのお母さんです。智江子さんが女学校の学徒動員に出た時にお母さんに買ってあげたべっ甲の髪留めがそのままだったので、母だと 分かったそうです。DSC00261.jpg
 そして、智江子さんが見ている視線の先には何があったのかが思い出されました。前の家が歯医者さんだったのですが、その裏庭の防空壕の奥に吹き飛ばされ て、一命をとりとめた7歳の少女・耐子さんを、智江子さんの父親が助け出すところを心配しながら見ていたのです。その翌日、智江子さんは父親と福岡県に移 り住みましたが、その父は体調が急変して、8か月後に亡くなられたそうです。
 耐子さんは現在も長崎市に住んでいて、智江子さんは67年ぶりの再会を果たすことができました。戦後、被爆者はすごい差別を受けていました。特に女性は結婚、出産で苦しい思いをしてきましたので、耐子さんは被爆者であることを公にはしてきませんでした。
 番組の最後に、綾瀬さんは「智江子さんや耐子さんの記憶を胸に刻み、私は祈り続けていきたい。そう思いました」と語りました。
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被爆体験を語り継いでいくこと

明日、8月6日は、ヒロシマ被爆67年の日です。
 年々被爆者の方が高齢化して、永眠されたことを聞くにつれ、被爆体験を語り継ぎ、核兵器廃絶を世界に訴え続けていくことの大切さを痛感します。
 今年、5月9日、広島県医師会長で、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部長の碓井静照さんが、お亡くなりになりました。享年74歳でした。(IPPNWについては、2010年の第19回世界大会声明「バーゼル宣言」を資料に掲載します)
 碓井さんは、8歳の時に爆心地から2.3キロメートル離れた自宅近くで閃光を浴び被爆しました。そして防空壕に運び込まれ、水を求めて息絶えていった人 たちを目の当たりにしたことが、医師を志すきっかけになりました。1998年から広島市医師会長を3期6年務め、2004年に広島県医師会長に就任。地域 医療の充実をけん引するとともに、外国に点在する被爆者の医療支援のために、北米や南米へ現地健診に赴くなど、多くの功績を残しました。また、広島市の平 和式典の平和宣言に盛り込む被爆体験談の選定委員でもありました。
 去年の広島平和宣言の抜粋を紹介しましょう。「8月6日午前8時15分に、一発の原子爆弾でそれまでの生活が根底から破壊されてしまいます。当時16歳 だった女性の言葉です。――『体重40キロの私の体は、爆風に7メートル吹き飛ばされ意識を失った。意識が戻った時、辺りは真っ暗で、音の無い、静かな世 界に、私一人、この世に取り残されたように思った。私は、腰のところにボロ布をまとっているだけの裸体で、左腕の皮膚が5センチ間隔で破れクルクルッと巻 いていた。右腕は白っぽくなっていた。顔に手をやると、右頬はガサガサしていて、左頬はねっとりしていた』・・・・ 被爆者は、さまざまな体験を通じて、 原爆で犠牲となった方々の声や思いを胸に、核兵器のない世界を願い、毎日を懸命に生き抜いてきました。・・・・ その被爆者は、平均年齢77歳を超えなが らも、今もって、街を蘇生させた力を振り絞り、核兵器廃絶と世界恒久平和を希求し続けています。このままで良いのでしょうか。決してそうではありません。 今こそ私たちが、すべての被爆者からその体験や平和への思いをしっかり学び、次世代に、そして世界に伝えていかなければなりません。」
 先日、NHKのニュースで、広島市が「被爆体験を語り継ぐ人」を募集し研修を始めたことが報道されました。20歳代の若い人を含む120人余が参加する 研修で、17歳の時被爆した竹岡智佐子さんが体験を語りました。竹岡さんは被爆した3年後に男の子を出産しましたが、生後まもなく亡くなりました。当時医 師からは原爆が原因ではないかと言われました。「生まれて18日目、さっきまでおっぱいをおいしそうにごくごく飲んでくれた。でももう飲めない。口がこわ ばって、目がうつろになってきた。そして流れるお乳も飲まないで息を絶ちました。お医者さんは、これは原爆病ですよ・・・・」と。受講生たちは、被爆体験 の重さを受け継いで語っていくことの難しさを感じましたが、竹岡さんは「若い人たちに、お元気な方たちに語り継いでいただきたい。それが私の願いなんで す。どうかよろしくお願いします」と話されました。被爆体験伝承者は、約3年の研修を経て、2015年度から広島市の原爆資料館を訪れる人たちに原爆の悲 惨さを伝える活動を始める予定です。
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【資料】
第19回IPPNW世界大会声明
核戦争防止国際医師会議(IPPNW)
2010年8月29日、スイス・バーゼル

バーゼル宣言

 65年前の8月、米国は広島と長崎の上空で世界初の原子爆弾を爆発させた。そして世界は想像もしなかった危機的時代に突入し、未だにそこから解き放たれ ていない。一発の核兵器でひとつの都市を破壊できる。広島級の核弾頭100発で何千万もの人々を瞬時に殺戮でき、地球上の気候を変動させ、飢餓と疫病によ り十億人もの命が失われる。米ロが未だに配備している何千もの核兵器の応酬があった場合、地球そのものが居住不可能な荒廃した土地となってしまう。
 例えば、核兵器が致死性のウィルスで、世界的に蔓延し何億人もの人々が罹患・死亡するほどの威力があれば、世界中の国々が資金を惜しまず提供し、これを 封じ込め、根絶しているだろう。既に天然痘、結核、ポリオでそうしてきた。そして今日、HIV/エイズ、がん、そして新たに出現している病に対して資金を 集結させている。しかし感染症とは異なり、核の脅威は我々自らがもたらした。核兵器は人間が作り出したものである。核兵器のもたらす影響はどのようなウィ ルスよりも恐ろしいものである。しかし核兵器を根絶することは実は容易なことである。核兵器を廃絶するという固い決意とその決意を結末まで見届ける強い意 思さえあればよいのだ。
 IPPNWは、地球上の気候への壊滅的な影響を防ぐ必要性と並んで、世界中の核兵器廃絶が現在の我々の最も緊急な健康と安全保障上の優先課題であると信 じている。赤十字国際委員会(ICRC)、世界保健機関(WHO)、世界医師会(WMA)などの国際的医療保健機関と各国の医師会が、核兵器の廃絶こそが 核兵器の使用を防止する唯一の確かな方法であるという我々の信念に賛同している。
 核兵器禁止条約(NWC)は、全ての核兵器保有国が自国の核兵器を全廃することを求め、全ての国が将来にわたり核兵器を保有することを禁じている。これ が、我々が招いた人道主義の危機を防ぐ最も効果的で実際的な条約である。化学・生物兵器、対人地雷、クラスター爆弾に対しては既にそのような条約が存在し ている。核兵器も同様にとっくの昔に廃棄され、その脅威が取り除かれるべきであった。核兵器が発明されたことを取り消すことはできないが、核兵器を解体 し、再び使用されないように保障することは我々の力でできることである。
 我々は「核兵器のない世界の平和と安全保障」のために努力したいというオバマ大統領のプラハ演説を歓迎した。それから我々は、核兵器廃絶反対派がこの目 標の達成には何十年もかかると主張するのを耳にしてきた。彼らは、世界がより平和でより安全になるまで核兵器廃絶は見送るべきであると言う。核兵器をゼロ にするという目標は間違っている、そして、核兵器を持つ国と持たない国が存在しても、核兵器は実際に世界の安定と安全を強化するのだと論じる者さえいる。 核抑止力には効果があると一般市民を安心させようとしているのだ。核兵器保有国は核軍縮に関して新たに肯定的な発言をする一方で、国家安全保障を理由に、 これから数十年にわたり何千何百という核兵器を武器庫に保有し続ける計画である。これらの議論はいずれも精査に耐えうるものではない。
 核兵器廃絶はより平和でより安全な世界に向けての重要なステップである。核兵器保有を全ての国でなく限られた国のみに認めれば、核拡散と不安定さを促進 することとなる。それは北アジアや中東の状況を見ると明らかである。核抑止力(これは全市民を焼き尽くすという脅迫の婉曲表現である)に失敗はないと期待 することは幻想に過ぎない。
 核兵器廃絶は議論の余地がないほど正当な目標であり、素早く確固たる速度で進めていくことが必要だ。核兵器のない世界の実現を阻む唯一の障害は強硬な政 治姿勢である。秋葉忠利広島市長と4,000以上の都市の市長は2020年までに核兵器のない世界を実現するよう呼び掛けている。この課題を達成するのに 10年は十分すぎるほどの時間である。IPPNWは平和市長会議とともにこの提案の実現に努力していく。
 原子力エネルギー利用の世界的普及は、原子力産業および核燃料製造に既得の経済的利権を有する政府によって強力に推進されているが、核兵器廃絶にとって 深刻な障害となっている。原子力エネルギーは気候変動問題に対する有効な解決策ではなく、運転過程の全ての段階で健康と環境を危険にさらす。原子力発電所 が核拡散の危険性を内在しているだけでなく、原子炉そのものが攻撃対象となることも問題である。攻撃対象の数は増やすのではなく減らしていくべきである。 加えて、原子力エネルギーで世界のエネルギー需要を満たすのは極めて高額な手段である。IPPNWは、再生可能なエネルギー源の世界的促進、エネルギー安 全保障の強化、化石燃料や原子力に依存しない経済・社会発展の実現を目指す国際再生可能エネルギー機関(IRENA)を支持する。
 何事も実現までには多くの段階がある。我々は米ロ間で締結された新START(新戦略核兵器削減交渉)を控えめではあるが正しい方向への一歩として支持 する。包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効は数年前に実現しているべきであったが、直ちに完了させるべきもう一つの段階である。その他の建設的段階と して、全ての核兵器保有国の先制不使用宣言、米国の戦術核兵器の欧州からの撤去、核分裂性物質の製造禁止、核兵器運搬システムを高度警戒状態から外すこ と、そして、新型兵器やその製造・実験用インフラの近代化プログラムを中止することなどがある。医療を専門とする者も、放射性医薬品製造用の全ての原子炉 を核兵器級の高濃縮ウラン(HEU)使用から低濃縮ウラン(LEU)使用に転換することによって、医療関係でのHEUの商業取引を止める義務がある。これ ら全ての段階は直ちに実行できるはずであり、実行すべきものである。
 しかしこれらは包括的核兵器廃絶協定の交渉に代わるものでもなければ、不可欠の条件でもない。ある特定の兵器規制措置の遅れが、速やかに核兵器ゼロを達 成するという最も重要な目標を妨害することがあってはならない。ここにIPPNWが2007年に核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)を立ち上げた理由 がある。ICANの目的は大量殺戮兵器を世界から排除する核兵器禁止条約への市民および政府関係者の支持強化である。
 核戦争はこれまで考え出された中で最も極端な形の武器による暴力である。しかしそれだけではない。冷戦終結以降も、イラク、アフガニスタン、バルカン諸 国、旧ソ連共和国、中東、アフリカ、南アジアおよびラテンアメリカでは戦争や軍事介入により百万人単位で、主として非戦闘員が亡くなった。戦争、犯罪、自 殺、事故に関連した小火器の使用で、毎年、何十万人もの人が死亡し、何百万人もの人が負傷している。さらに、小火器や他の通常兵器の使用が、特に世界で最 も不安定な地域においては、容易に核兵器の使用にエスカレートしかねない。WHOは、暴力は、武器を用いた暴力も含めて、重要かつ予防可能な健康問題と特 定し、根底にある原因をよりよく理解し、効果的な介入を行っていくための公衆衛生面からの取り組みが必要であるとしている。これは今年10年目となる IPPNWの「予防を目指して(Aiming for Prevention)」運動の最終目標である。
 平和、安全保障、そして自由は全ての人々の権利である。これらの権利を世界中に普及させる最も効率的な手段は国連のミレニアム開発目標である。あらゆる 種類の武装暴力は人間の安全保障と発展を脅かすものである。この地球規模の問題の公衆衛生上の側面はほとんど理解されていない。意図的な暴力による傷害や 死亡の割合は高いが、それを低下させるため、我々はあらゆる社会階層において予防政策を支持する、行動重視での調査、教育そして唱導を行っていく必要があ る。IPPNWは健康と開発は切り離せないものであると認識しており、「武装暴力と開発に関するジュネーブ宣言」を早い時期から支持している。この宣言 は、2015年までの武装暴力による世界の負担の測定可能な低減、人間の安全保障における具体的成果を求めている。
 我々はIPPNW設立30周年およびノーベル平和賞受賞団体としての25周年を記念するため、バーゼルでの「第19回IPPNW世界大会」に参集した。 IPPNWは我々の最優先事項である世界から核兵器を排除すること、そして集団安全保障を提供する手段としては時代遅れで非効果的であり、人道に値しない 方法である戦争を防止することを今再びここに誓う。

(原文:英語、翻訳:広島県医師会事務局)

税と社会保障の一体改悪に反対★このまますすむと困っちゃう人々の会

7月18日の夕方、首相官邸前で「毎週水曜日 総理にお届けします ハートフルなスタンディングアクション」が行なわれました。長いネーミングですが副 題は「えっ!?このまますすんじゃっていいの?消費税増税?生活保護改悪?社会保障切り捨て?~総理!私たちの声を聞いてください!~」です。
 最初にスピーチをされたのは、反貧困ネットワークの代表で弁護士の宇都宮健児さん。タレントの家族が生活保護を受給していたことに端を発して、マスコミ などで生活保護に対するバッシングがされ、生活保護制度が改悪されようとしていることについて抗議の声をあげました。首都圏生活保護利用者有志の人たちが 「生活保護制度は私たちの生存(くらし)を守る大切な制度です」とこもごもお話しをされました。また、消費税増税法案と社会保障費の削減を志向し、憲法 25条の生存権を踏みにじる「社会保障制度改革推進法案」の審議が参議院で始まる中で、田村智子議員(日本共産党)が廃案にむけて奮闘する決意を話されま した。
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