2018年8月15日水曜日

終戦73年に日本の戦争責任を考える(1)

 近代の日本の対外政策を学ぶことは、戦前・戦後のアジア・太平洋地域の戦争と平和を考えるうえで欠くことはできません。今、読んでいる『日本の戦争 歴史認識と戦争責任』(山田朗著/2017年)は、第一部第1章で「日露戦争とはどういう戦争だったのか」を論じており、そのなかでいくつかの興味深いことを気づかされます。978-4-406-06188-9L.jpg
 明治政府が、富国強兵政策をすすめ、欧米列強に追いつこうとしていた時代に大きな転機となったのが、日露戦争でした。年表を見れば、1889年2月;大日本帝国憲法公布、1890年10月;教育勅語、1894年8月~95年4月;日清戦争、1902年1月;日英同盟(第1次)調印、1904年2月~05年9月;日露戦争と流れていきます。当時、「日本の対外膨張の一番大きな動因は〈ロシア脅威論〉」であったということです。ロシアだけではなく多くの欧米列強がアジアの植民地政策を進めていた中で、こうした明治政府の政策の判断材料はイギリスからの情報であったこと、イギリスがアジアでの権益を確保するために日本を利用したということが書かれています。明治政府は(「明治政府」と私が呼ぶのは主権は国民になく天皇にあったから)北東アジアの植民地政策を進めるために、1906年2月に韓国統監府設置、同年11月に南満州鉄道株式会社設立、1910年8月に韓国併合へと動きます。
 日露戦争の詳細(失敗と成功)は省きますが、「日露戦争とはどういう戦争だったのか」の結びには、次のように書かれています。日露戦争は失敗の連続でしたが、「その失敗面はほとんど例外なく隠され、『失敗ではなかった』と言いかえられた。例えば、弾がなくて困った話は、『弾がなくても戦えた』という話にすり替えられてしまう」ということ。失敗を隠蔽して美談に変えてしまうことの極みは、「軍神・○○中佐」というように、亡くなった人を軍神に祭り上げ、本来批判されるべき幹部の責任を免罪してしまうことです。
 このように、明治から昭和にいたる天皇政府は、大本営発表や靖国神社合祀(英霊を讃える)によって、無謀で残酷な侵略戦争に国民を総動員していったのです。
 戦後日本は、日本国憲法により戦争を放棄し、国民主権と基本的人権の尊重を確立し、国民の不断の努力でこれを守ることを誓いました。明治から昭和の天皇政府の時代の過ちを二度と繰り返してはいけないと、強く思います。

2017年10月21日土曜日

憲法9条を守りぬく選挙

いよいよ明日、10月22日は、日本の平和主義の大黒柱である憲法9条をまもるのか、アメリカと一緒に戦争する国にしてしまうのかの岐路となる総選挙です。
安倍内閣は、2014年7月に集団的自衛権の行使を容認する方針を閣議決定し、翌2015年9月には、その方針を盛り込んだ安保関連法(=戦争法)を成立させました。集団的自衛権の行使容認を具体化する安保関連法は、多くの憲法学者が違憲であると表明し、国会前には10万人を超える市民が集まり、戦争法の廃案を求めました。しかし、こうした市民の声を無視して2015年9月19日未明に参院本会議で自民、公明両党と日本を元気にする会、次世代の党、新党改革などの賛成 多数で法案は成立してしまいました。
憲法9条とは相容れない安保法制を作って、自衛隊をアメリカとともに海外で戦争する軍隊にしようとしている安倍・自民党は、この総選挙で憲法9条の明文改憲を公約に掲げました。安保法制廃止、立憲主義の回復を求める市民と野党の共闘で、安倍内閣を退場させることが最大の争点だと私は訴えたいです。
もちろん貧困と格差を解消するための累進課税と社会保障の拡充も大切な争点です。貧困から抜け出すために若者が戦場にかり出されていくような社会にしてはいけないです。逆進性(所得の低い人ほど負担が重い)が強い消費税の増税はやめるべきです。
小選挙区という与党に有利な選挙制度のもとで、市民と野党の統一候補が1人でも多く当選して、比例代表では市民と野党の共闘の要である日本共産党が議席を伸ばすことが、憲法9条を守りぬくために必要です。そのことを皆さんに訴えます。

2016年7月9日土曜日

歴史的な参議院選挙の前日に

ブログ「平和に生きる権利」お休みしていましたが、歴史的な参議院選挙にあたって何も発信しないことは、歴史的な後悔になると思い、キーボード(筆)をとりました。
選挙最終日ではありますが、あいにく外は雨模様。
ネット選挙で、ツイッターやブログを見ている人も増えてきたと思います。
何故、今回の選挙が歴史的かといいますと、安倍政権による憲法改悪、戦争する国づくりに反対する、野党が共闘して望む初めての選挙だからです。
定数1の選挙区すべてで、野党統一候補が立候補し、野党と市民の共同が燎原の火のようにひろがりました。
7月8日、浦和駅頭での街頭演説で日本共産党の不破哲三さんは、この野党共闘の大義について語り、「第二次世界大戦時、ヒトラーの侵略、ヒトラーのファッショ支配に反対する国民的な共闘が各国に生まれた。レジスタンスと呼ばれた。その合い言葉は、“神を信じる者も、信じない者も”。世界観の一番大きな違いを乗りこえて、ヒトラーの侵略に反対し、民主主義と独立を守る大義のために、すべての勢力が団結した。ここに統一戦線の素晴らしい先例がある」と述べました。
第二次世界大戦で日本は、ファシズムの日独伊三国同盟の中で、最後の最後まで国家神道の力を借りて、無謀な戦争に国民を動員しました。安倍内閣がめざす憲法「改正」は、この戦前に回帰するものです。伊勢志摩サミットで安倍首相が伊勢神宮に集団参拝をしたことについて、不破さんは、国家神道の総本山にまず最初に外国首脳を参拝させるとは何事かと、きびしく批判しました。
日本国憲法のすべての条文を守り生かすことこそが、もっともだいじな政治の選択であることが、不破さんの演説でよく分かったと思います。ぜひ、ご視聴ください。


2014年12月28日日曜日

2014年を振り返る

 ブログ「平和に生きる権利」の今年最初の記事は、東京都知事選挙の問題で、私は次のように書きました。「宇都宮けんじさんは、都の予算を大型開発優先から福祉・保育優先に変えていくこと、東電・福島原発の最大の電力消費地であった東京が被害者救済のためにできる限りの支援をしていくこと、安倍政権による「戦争する国づくり」に反対し、平和憲法の精神を生かして東京・ソウル・北京の市長会議を開催することなどを訴え、多くの聴衆から声援を受けました」
 この一年間は、都知事選挙で宇都宮けんじさんが訴えた争点をめぐって、大きな政治的な荒波に国民がさらされた一年であったと言っていいと思います。
 私は、安倍政権が進める「戦争する国づくり」と原発再稼働に抗する市民の運動を紹介し、パレスチナ・ガザ地区への攻撃やイラク戦争がもたらしたものに目を向けてきました。そこで考えたことは、世界から戦争という暴力をなくしていくためには、日本国憲法第9条の精神を日本から世界へ発信していくことが必要だということです。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」…。そのためには、この憲法を壊す安倍政権による「集団的自衛権行使容認」の閣議決定とそれを具体化するあらゆる政策を撤回させなければいけないということです。
 12月の総選挙では、残念ながら、世界とアジアの平和について、日本がすべきこと、してはいけないことを真剣に考えて政権を選ぶことにはいたりませんでした。経済問題はもちろん大切な争点でしたが、これも貧困と格差拡大をすすめた安倍政権に審判を下すことになりませんでした。2015年は、改憲勢力が多数を占める国会のなかで、日本共産党をはじめとする憲法を守り生かす勢力が、国民各層のさまざまな運動と協力・共同して、戦争への道をストップさせることができるかどうかの正念場であると思います。
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【2014年1月~12月の記事一覧】
「新しい東京を、始めよう」と映画「ひまわり」
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26

東京都知事選挙と「さよなら、籾井会長!」NHK前抗議アクション
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01

戦争と芸術 ~藤田嗣治の半生~
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-02-11

真実から目をそらす情報操作 ~映画「フェア・ゲーム」
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-03-02

原発と東日本大震災と放射能汚染
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-03-11

メルトダウン 放射能“大量放出”の真相
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-03-16

第85回中央メーデー
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-05-02

原発再稼働に反対し続けて・・・
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-05-03

5・3憲法記念日の集い(千葉市)
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-05-04

沖縄-愛と平和と-宮良瑛子展(丸木美術館47周年)
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05

ベトナム戦争とアレン・ネルソンと9条
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-05-31

人の命よりも大企業の利益を優先する安倍内閣
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-07-20

イスラエル政府はガザ地区への軍事攻撃を即時停止せよ
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-07-20-1

イスラエルはガザ地区への無差別攻撃を止めよ
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-08-10

世代を超えて戦争を語る-JIM-NETがイラクからゲストを招きツアー開始
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-10-26

原発ゼロの日本をめざす連帯と交流のつどい
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-11-02

「戦争する国づくり」をやめさせる総選挙に!
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-11-22

2014総選挙投票日の朝に
http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2014-12-14

2014年12月14日日曜日

2014総選挙投票日の朝に

 今日は、安倍首相が消費税増税による貧困と格差拡大、沖縄県民にノーの審判を突きつけられた辺野古への新基地建設などの失政を払拭するために仕組んだ解散総選挙の投票日です。昨年7月の参議院選挙からネット選挙が解禁され、昨夜24時までインターネットを使って候補者が訴えをしていました。短い選挙戦を通じて私が感じたことを少し書きます。
 アベノミクスで恩恵を受けた一部の金持ちの他はみんな生活がたいへんで、師走の忙しい中で選挙だなんてつきあっていられないといった人たち、アベノミクスが争点だとか自民党が300議席超の予測報道を出すマスコミにしらけている人たちなど、総選挙への低い関心が当初目立ちました。
 しかし、首尾一貫して国民が主人公の政治を訴える政党が、アベノミクスを「この道に先はない」と批判し、消費税に代わる社会保障の財源を具体的に示すと、有権者の関心が高まってきました。政治とカネの問題で、私もかねてから主張してきた「政党助成金の廃止」も選挙の争点に登ってきました。
 また、川内原発をはじめとする原発再稼働の動きを何とか止めなくてはいけない、1年前に国民の反対を押し切って国会を通ってしまった「秘密保護法」を廃止しなくてはいけない、集団的自衛権の行使容認と戦争する国づくりをやめさせなくてはいけないという多くの人々が行動に立ち上がり、総選挙への参加を呼びかけました。安倍政権のきな臭い動きにストップをかけることができる政党はどこか明らかになったと思います。
 有権者としての権利を行使することが本当に大切なときであり、この総選挙は歴史を左右する選挙だと言っていいと思います。みなさん、一緒に政治を国民の手に取り戻しましょう。
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【政治を考える本2冊紹介】
『私たちは政治の暴走を許すのか』立憲デモクラシーの会編(岩波ブックレット)
『秘密保護法-社会はどう変わるのか』宇都宮健児・堀敏明・足立昌勝・林克明(集英社新書)
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2014年11月22日土曜日

「戦争する国づくり」をやめさせる総選挙に!

 安倍晋三首相は11月21日、衆議院を解散し、総選挙で安倍政権の政策を国民に信を問うことになりました。安倍内閣は、特定秘密保護法制定や集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更など「戦争する国づくり」と、大企業優遇の経済政策、国民生活破壊の消費税増税と社会保障の切り捨てを行ってきました。
 「打倒!安倍政権 守れ!国民のくらし、いのち、平和」を掲げて11月29日に大集会・国会包囲行動を準備していた「11・29大集会・大行動」実行委員会は、大集会・大行動を延期することを決め、歴史的な総選挙で安倍政権に審判を下そうと、アピールを発表しました。

 歴史的な総選挙で、安倍「暴走」政治ノーの審判を下そう!
  -「11.29大集会・大行動」実行委員会からのアピール -

 安倍首相は本日、消費税率10%への再引き上げの“延期”を表明したうえで、衆議院を解散し、総選挙に打って出ることを正式に宣言しました。アベノミクスの破たんが明白になり、沖縄県知事選挙で歴史的な大敗を喫するなど、世論と行動に追いつめられての解散・総選挙(12月2日公示、14日投開票)です。
 「戦争する国づくり」と「世界で一番企業が活動しやすい国づくり」を強権的におしすすめる安倍「暴走」政治に審判を下す絶好のチャンスです。「暴走政治は許さない」という思いを寄せ合い、安倍政権に歴史的なノーの審判を下し、退陣に追い込みましょう。

 私たちは、11月29日に安倍政権打倒を掲げた大集会・大行動を行おうと、9月に実行委員会を正式発足させ準備をすすめてきました。
 憲法に反して集団的自衛権行使容認の閣議決定をおこない、8割以上の県民の拒否の意思を無視して名護市辺野古沖への米軍基地建設に強行着手し、福島原発事故の収束もないままに九州電力・川内原発の再稼働に躍起になるなど、安倍政権の存在は、日本の平和とくらしの安定の最大の障害物になっているという思いを一つにして集会の成功をめざして活動してきました。こうした私たちの運動の到達点が引き寄せた解散・総選挙です。
 11.29大集会・大行動の成功に向けて全国から寄せていただいた支援と活動を、総選挙での安倍政権ノーの審判に結実させましょう。そのため、予定した「11.29大集会・大行動」は総選挙後に延期することにします。職場・地域から安倍政権打倒の声をさらに大きくひろげていただく活動に切り替えていただくよう、心から呼びかけます。

 アベノミクスは、ごく一握りの大企業や資産家には恩恵をもたらしたかもしれませんが、労働者の賃金や中小事業者、農民の所得は改善せず、消費税増税と円安による物価上昇がくらしに重くのしかかっています。くわえて、安倍政権は、消費税率をさらに引き上げ、不安定で低賃金の労働者を大量につくりだす労働法制の大改悪や社会保障解体攻撃を推進し、TPP参加で農業や食の安全、医療、雇用、地域経済を破壊しようとしています。
 消費税増税は社会保障拡充のためという「嘘」もはっきりしました。安倍政権は、医療・介護・年金制度を大改悪し、給付削減と負担増を同時にすすめる一方で、法人税減税を早々に決定し、軍事費を聖域扱いしています。
 総選挙後には、集団的自衛権行使容認の閣議決定を具体化する日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)の見直しが、国会審議も国民的論議もおこなわずに、憲法の枠を飛び越えて最終合意されようとしています。

 安倍「暴走」政治に対する「評価」が、今回の総選挙での争点です。
 集団的自衛権行使容認など「戦争する国づくり」にも、消費税増税や原発再稼働、労働法制と社会保障大改悪、TPP交渉妥結など「世界で一番企業が活動しやすい国づくり」にも、総選挙でノーの審判を下さなければ、安倍「暴走」政治を止めることはできません。
 私たちは広範な市民のみなさんに、一人一人が選挙権を行使し、また声をかけあって、安倍「暴走」政治にノーの審判を下すことを呼びかけます。
 投票日までの時間はわずかです。沖縄県知事選挙における翁長雄志氏の圧勝につづいて、多くのみなさんが「安倍『暴走』政治ノー」の声をあげ、行動に立ちあがっていただき、12月14日を政治の流れを変える日にすることを心から呼びかけます。

 2014年11月18日
  「打倒!安倍政権 守れ!国民のくらし、いのち、平和
              11.29大集会・大行動」実行委員会
【 11.29大集会・大行動実行委員会 】
呼びかけ人(敬称略):愛敬浩二(名古屋大学大学院法学研究科教授)、五十嵐仁(元法政大学教授)、池田香代子(翻訳家)、伊波洋一(元沖縄県宜野湾市長)、内田聖子(アジア太平洋資料センター事務局長)、斎藤貴男(ジャーナリスト)、名木昭(福島県青色申告会連合会名誉顧問)、浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)、堀尾輝久(東京大学名誉教授)、本田宏(外科医師)、山根香織(主婦連合会会長)
実行委員会参加団体(順不同):日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会、全日本年金者組合、日本民主青年同盟、治安維持法犠牲者国家賠償同盟、全国生活と健康を守る会連合会、全日本教職員組合、日本医療労働組合連合会、全国農業協同組合労働組合連合会、映画演劇労働組合連合会、全国福祉保育労働組合、婦人民主クラブ、消費税をなくす全国の会、日本宗教者平和協議会、国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会、日本平和委員会、東京地方労働組合評議会、全国生協労働組合連合会、全国印刷出版産業労働組合総連合会、日本自治体労働組合総連合、公害・地球環境問題懇談会、消費税廃止各界連絡会、平和・民主・革新の日本をめざす全国の会、化学一般労働組合連合、日本婦人団体連合会、全国労働組合総連合、全日本民主医療機関連合会、新日本婦人の会、農民運動全国連合会、全国商工団体連合会、全国保険医団体連合会、憲法改悪阻止各界連絡会議、中央社会保障推進協議会、安保破棄中央実行委員会、「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を」国民大運動実行委員会

2014年10月26日日曜日

世代を超えて戦争を語る-JIM-NETがイラクからゲストを招きツアー開始

 創立10周年を迎えたJIM-NETは、イラクから若者+シニア世代を招き、世代を超えて戦争を語るツアーを企画し、10月24日から催しが始まりました。JIM-NETのblog とfacebook、「しんぶん赤旗」の記事から抜粋してその様子をお伝えしたいと思います。まず、イラクからのゲストお二人の紹介です。
◆ムスタファ・イマッド (20歳) … バグダッド出身。8歳の時に、イラク戦争を体験。疎開先で米軍のヘリコプターの攻撃をうけ、足を負傷。ジャーナリストの土井敏邦氏が取材し、ニュース・ステーションで取り上げられると、反響を呼び募金が集まりヨルダンで手術を受けることができました。
◆アブ・サイード(61歳)… バグダッド出身のパレスチナ人。一族はハイファ出身。若いころは、パレスチナ抵抗運動に参加したことも。2004年から、JIM-NETに協力し、スタッフとして小児がんの患者の面倒を見ています。バグダッドのパレスチナ難民はイラク戦争後の迫害が激しく、多くは国を去っていきました。
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◎JIM-NET facebook ~ 23日に来日したムスタファ君とアブサイードさん。24日に早速参議院議員会館で記者会見しました。ムスタファ君は2003年4月に米軍の爆撃で負傷したこと、一時は切断の危機に瀕したが日本人ジャーナリストの土井敏邦さんの尽力でヨルダンでの治療を受けられたこと、今は高校に通いながら父の経営するスーパーマーケットで働いていること、将来は技術者になりたいと思っていることなどを率直に語りました。アブサイードさんは「イスラム教は本来知的な宗教、寛容な宗教なのです」と語り、暴力的な見方をされていることに対して深い懸念を表明しました。会場からは、マララ・ユスフザイさんのノーベル平和賞受賞でも話題になった「イスラム社会の女子教育」についても質問がありましたが、2人ともイラクでは男女に教育の差別はない(中学・高校は男女別学だが小学校・大学は共学)と答えました。
https://www.facebook.com/JapanIraqMedicalNetwork
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◎「しんぶん赤旗」10月26日付 ~ イラクで医療支援などを行っているNPO「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)」は24日、イラクからのゲストを招いた集会を参院議員会館で開きました。「世代を超えて戦争を語る」と題して首都バグダッド出身のムスタファ・イマッドさんとアブ・サイードさんが現地の様子を報告しました。
 イラク戦争を経験したムスタファさんは、バグダッドにある祖父の家の前で、米軍の爆撃にあい、左足に大けがを負いました。治療により回復したものの、いまでも長時間は歩けません。高校に通っていますが、通学の際に危険地帯を避けるため「2分の距離を15分かけて遠回りしなければならない」と話しました。
 「米国による占領は破壊しかなかった」と語るサイードさん。「戦争前は決まりが守られていたが、戦争後は無法状態になってしまった。アメリカの言っていた民主主義とはほど遠い状況だ」「米国が区別して扱うせいで、一つの家族だったイスラム教のシーア派とスンニ派が、いがみ合うようになってしまった」といいます。
 2人は11月初旬まで日本に滞在する予定で、沖縄、福島、長崎などで交流会を実施。8日には「JIM-NET 10周年&2015チョコ募金キックオフ」集会を都内の立教大学で開催します。
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◎JIM-NET facebook ~ 【10/25】Talk&Music サダコがつなぐ広島とイラク(代官山)sadako legacy とのコラボ。 … 佐々木祐慈さんと佐藤真紀が、禎子さんの本物のおりづるを見せっこ。平和にむかって努力しなければいけないのは、禎子の遺言です。ふたりとも、「重たいですね」というところから話がはじまり、戦争を体験したムスタファが話してくれました。ムスタファ君は、技術者になりたいといいますが、一方で、幾ら勉強しても、コネとか汚職が蔓延していて、仕事に就けない。夢の実現は実に難しいかを説明してくれました。宗派対立に関しては、子どもは、詳しいことがわからなくても大人のまねをする。そのことをとても心配していました。「平和」とい言う言葉だけじゃだめで、リアルな平和を作るためには、大人が本気にならなければいけません。そして、祐慈さんが率いる輪音の演奏。「祈り」も歌ってくれました。