2012年4月30日月曜日

沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい(2)

「沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい(1)」のつづきです。
 伊波洋一さんの講演に続いて、弁護士で日本平和委員会代表理事である内藤功さんが、「基地撤去・安保廃棄と砂川違憲判決の意義」を特別報告されました。
 砂川事件は、1957年7月、当時の砂川町にあった米軍立川基地拡張に反対するデモ隊の一部が基地に立ち入り、同年9月に23人が日米安保条約に基づく 刑事特別法違反容疑で逮捕され、うち7人が起訴されたものです。1959年3月30日、東京地裁は米軍駐留は違憲として7人に無罪を言い渡しました。伊達 秋雄裁判長の名前から伊達判決と呼ばれます。
 伊達判決は次のように述べています。「わが国に駐留する合衆国軍隊はただ単にわが国に加えられる武力攻撃に対する防禦(ぼうぎょ)若しくは内乱等の鎮圧 の援助にのみ使用されるものではなく、合衆国が極東における国際の平和と安全の維持のために事態が武力攻撃に発展する場合であるとして、戦略上必要と判断 した際にも当然日本区域外にその軍隊を出動し得るのであつて、その際にはわが国が提供した国内の施設、区域は勿論この合衆国軍隊の軍事行動のために使用さ れるわけであり、わが国が自国と直接関係のない武力紛争の渦中に巻き込まれ、戦争の惨禍がわが国に及ぶ虞(おそれ)は必ずしも絶無ではなく、従つて日米安 全保障条約によつてかかる危険をもたらす可能性を包蔵する合衆国軍隊の駐留を許容したわが国政府の行為は、『政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起きない ようにすることを決意』した日本国憲法の精神に悖(もと)るのではないかとする疑念も生ずるのである。」「わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用 する目的で合衆国軍隊の駐留を許容していることは、指揮権の有無、合衆国軍隊の出動義務の有無に拘らず、日本国憲法第9条第2項前段によつて禁止されてい る陸海空軍その他の戦力の保持に該当するものといわざるを得ず、結局わが国内に駐留する合衆国軍隊は憲法上その存在を許すべからざるものといわざるを得な いのである。」「安全保障条約及び行政協定の存続する限り、わが国が合衆国に対しその軍隊を駐留させ、これに必要なる基地を提供しまたその施設等の平穏を 保護しなければならない国際法上の義務を負担することは当然であるとしても、前記のように合衆国軍隊の駐留が憲法第9条第2項前段に違反し許すべからざる ものである以上、合衆国軍隊の施設又は区域内の平穏に関する法益が一般国民の同種法益と同様の刑事上、民事上の保護を受けることは格別、特に後者以上の厚 い保護を受ける合理的な理由は何等存在しないところであるから、国民に対して軽犯罪法の規定よりも特に重い刑罰をもつて臨む刑事特別法第2条の規定は、前 に指摘したように何人も適正な手続によらなければ刑罰を科せられないとする憲法第31条に違反し無効なものといわなければならない。」
 判例文の引用が長くなりましたが、日本国憲法に照らして、在日米軍基地の存在が許されないこと、基地内においても日本国民の人権が保障されなくてはいけ ないことを述べています。検察は東京高裁を飛び越えて上告(跳躍上告)し、最高裁は「高度に政治的な問題は、一見明白に違憲でない限り、第一義的には国 会、内閣が、最終的には国民が判断する」と憲法判断を避けて破棄差戻し判決をしました。
 当時の日米両政府は、米軍の駐留は憲法違反だとする伊達判決に驚き、マッカーサー米駐日大使は田中耕太郎最高裁長官と「内密の話し合い」を持つなど、司法の独立を侵す重大な介入をおこないました。
 内藤弁護士のお話を聞いて、日米安保と基地問題が、憲法五原則=(1)国民主権と国家主権、(2)恒久平和、(3)基本的人権、(4)議会制民主主義、 (5)地方自治、を侵害する根源的な問題であることがよく分かりました。憲法記念日を前に、このようなつどいで学習をすることができてたいへん有意義だっ たと思います。

2012年4月29日日曜日

沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい(1)

4月28日、「サンフランシスコ講和条約・日米安保条約発効60年~沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい」が、東京・明治大学で開催され、190人が参加しました。
オープニングは、東京のうたごえ協議会のみなさんによる演奏。
次に主催者を代表して、日本平和委員会代表理事の畑田重夫さんが開会あいさつをされました。
私が青年の頃、畑田さんが都知事選挙に革新候補として出られたことを思い出しました。ご挨拶のなかで90歳とおっしゃっていましたが、たいへんお元気でした。
講演は、元宜野湾市長の伊波洋一さんが、「いま、沖縄から訴える これからの沖縄と日本、アジア」と題しておこないました。
沖縄復帰から40年にもなるのに、沖縄の米軍基地がなぜ存続し続けるのかについて、日米安保条約の下で日本政府がまったくアメリカに対してものが言えない 実態があること、4月27日の日米両政府による在日米軍再編計画見直しの「共同発表」にあたっては、当初25日に公表する準備をしていたものが、米上院軍 事委員会のレビン委員長らが意見を出したために延期して文書が修正されるなど、まったく日本政府の意図しないところでものごとが決まっていくありさまが話 されました。
住宅密集地にある普天間基地の危険な実態についてはこれまでも聞いていましたが、大型ヘリ墜落事故後に沖縄防衛局が作成した飛行航跡図を見ると、明らかに 普天間飛行場の場周経路をはみ出して住宅地上空を旋回飛行しているのに、国は「場周経路飛行はおおむね守られていると考える」と言っていることには驚きま した。
在日米軍基地は、アメリカの軍事的目的のために好き勝手に使われているのに、「抑止力」という言葉で日本の国民はだまされてきたこと、台頭する中国と米国 の間で「台湾問題」をめぐって軍事的緊張が取りざたされたが、経済的にはアメリカも日本も中国との関係を強めており、軍事的衝突を避ける力が働いているこ とが話されました。2010年11月下旬のNHK日米安保特集アンケートでは、日米安保の将来像について、「日米同盟を基軸にする」が19%に対して、 「アジアの国々と国際的な安保体制を築く」が55%、「防衛力を持たず中立を保つ」が12%を占め、日本政府がおこなっている外交・安全保障政策は、民意 を反映していないことが示されました。
伊波さんは、日本政府が戦争国家アメリカへの従属をやめて、米軍基地を撤去させ、日米平和友好条約を締結する、そういう時期に来ていることを訴えました。

(次回につづく)
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2012年4月21日土曜日

第8回DAYS国際フォトジャーナリズム大賞

先日届いた、DAYS JAPAN 5月号の特集は、「第8回DAYS 国際フォトジャーナリズム大賞」でした。
東日本大震災の被災者と世界各地で人権の危機に直面した民衆の姿がそこにありました。
http://daysinternational.net/jp/category/award/award_2012/

第1位 林典子「東日本大震災 混沌と静寂」

DAYS特別賞 岩手日報社(鈴木多聞、熊谷真也、横田真紀、山本毅、鹿糠敏和、三浦隆博、佐藤光、長内亮介)「東日本大震災 襲いくる津波」

第2位 レミ・オシュリック「リビア革命」 (オシュリック氏は受賞を知った直後、シリアで砲撃にあい亡くなりました。心からご冥福をお祈りします)

第2位 アレッサンドロ・グラッサーニ「モンゴルの環境避難民」

第3位 カイ・レッフェルバイン「ガーナ 若者を蝕む先進国の廃棄物」

第3位 大久保忠司「東日本大震災 まなざしの先に」

第3位 アレックス・マージ「イラク戦争 本当の犠牲者」

審査員特別賞 千葉康由「東日本大震災 津波が消し去った街」
       恒成利幸「東日本大震災 慟哭の海」
       深田志穂「東日本大震災 津波の跡に」
       ミロス・ビカンスキ「ギリシャの経済危機」
       エド・オウ「エジプト 若者とネットの革命」
       アリス・メッシーニス「リビア 最後の戦場スルトにて」
       リサ・ウィルツ「フィリピン スラムの炭焼き場で」
       グエン・デュボウトミュー「コンゴ民主共和国 魔術師にされて捨てられて」
       アティット・ペラウォンメータ「インドネシア 硫黄鉱山の労働者」

 私はこれらの作品を見て、過酷な現実のなかで懸命に生きる人々の姿に大きく心を動かされました。

 審査員講評のなかからDAYS JAPAN編集長・広河隆一氏の言葉を紹介します。
 「選考にあたって、改めてフォトジャーナリストとは何かと考えました。その状況を理解し、それに対して自分が何をできるか、どう責任をとれるかを常に自 問自答する、それがフォトジャーナリストです。昨年は世界中で民衆の動きがあり、アラブ諸国では革命が、日本でも反原発のデモがありました。しかし、そこ にある怒りとか鬱屈を無視して、絵になるところだけを撮るのではその名に値しません。フォトジャーナリストは写真の上手下手で判断されるべきではなく、 「人間の生きる価値」をどこまで理解しているかにかかっています。・・・・(略)・・・・」