2012年12月24日月曜日

12・23福島チャリティフェスティバル

 学生有志の実行委員会が、12月23日、新宿アルタ前で、脱原発を訴えて、福島に思いをよせるライブ&トークイベントを行いました。集まった募金は、「福島復興共同センター放射能対策子どもチーム」に送られます。この共同センターは、甲状腺検査や除染、医療費助成の問題で、国や自治体への要請行動やシンポジウム、おしゃべり会の開催など、子どもたちを放射線被害から守る運動をしているところです。
 チャリティフェスティバルは11時からスタートし、ステージ企画が進行していく傍らで、学生たちが街頭募金活動を行ないました。私は、16時30分からのトーク「松本哉×ミサオ・レッドウルフ×鎌仲ひとみ」だけみさせていただきました。
 映画監督の鎌仲ひとみさんは、放射能がいかに危険なものかをまだ多くの人が知らないということ、映画づくりでは原発推進派の人の意見も含めて一緒に考えていけるように心がけていることなどを話されました。
 素人の乱の松本哉さんは、いままで原発をつくり、利権をつくってきた人たちがのさばってきたのは、何も考えないで言うことをきく人が多かったからだ。だから「言うことをきかない」で自分でできることは自分たちでやる、そういう仲間がいて、いろんな場所ができてというのをもっとつくっていかなければいけないと述べました。
 首都圏反原発連合のミサオ・レッドウルフさんは、大きなメディアで流れていることにみんなが注目しているという状態はよくない。いろんなコミュニティーがあってそこで発信していくとか、そういうことが普及していくと人々の意識が自立していく。自立しなくてもいいから、もっとましな考え方を聞けるようにならいといけないと訴えました。
 原発・被ばくの危険性を訴え、反原発・被災者支援の運動をすすめてきた3人が思いの丈を語った有意義なステージ企画でした。
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戦争の真実を知ること

 尖閣諸島問題を軍事力で解決しようとする政治家が発言を強めていますが、国民を守ることと、国土を守ることは、相反することが往々にしてあります。
 関東軍の謀略によって南満州鉄道が破壊された柳条湖事件(1931年9月18日)を口実に、日本の中国侵略戦争が拡大していきました。関東軍は、柳条湖事件を張学良軍の仕業であるとして軍事行動を開始して、翌1932年初頭までに満州全土をほぼ制圧し、32年3月に溥儀(ふぎ)を執政にすえた傀儡(かいらい)国家「満州国」がつくられました。
 「関東軍」というのは、日本が日露戦争で獲得した関東州と南満州鉄道という大きな権益を守るために関東州に設置された守備隊を、1919年に関東軍という名称に変え、天皇に直属する有力な部隊に格上げしたものです。守備隊も関東軍も同じ軍隊ですが、名前と位置づけが変われば国を挙げた侵略戦争へと暴走していくのです。
 日本軍は、日中戦争で非道きわまる虐殺を繰り返しました。国民がそれを望んでいたわけではありません。大本営発表により国民をマイルドコントロールし、「非国民」を容赦しない恐怖政治によって、国民総動員を成し遂げたのです。
 1945年4月1日、米軍が沖縄本島に上陸して始まった沖縄戦では、本土決戦準備の時間を稼ぐこと、国体を護持すること(天皇制を守る)のために降伏を許されず、およそ3か月にわたり激しい戦闘が続き、日本軍により壕から追い出された住民は、自決を強要されるなど、さまざまな虐待・虐殺などにより死の道連れにされ、軍人よりも多くの犠牲者を出すことになりました。
 総選挙で多数の議席を得た自民党は、憲法「改正」をめざしていますが、九条を変えて国防軍を設けることは、再び恐怖政治で国民を縛り、他国と日本の市民に戦争の犠牲を強いるという、歴史の過ちを繰り返すものです。戦争の真実を知り、子どもたちに伝えていくことは、平和に生きる権利を守り、世界に広げていくために必要な、良識ある日本人の責任だと思います。

2012年12月8日土曜日

JAL控訴審勝利をつかむ12・6大集会

 12月6日、東京「みらい座いけぶくろ」で、JAL控訴審勝利をつかむ12・6大集会が開かれ660人が参加しました。
 日本航空(JAL)は、2010年大晦日にパイロット81名、客室乗務員84名(計165名)を不当に解雇しました。解雇されたのは、経験豊富なベテランの職員です。この首切りが違法なものであることは、1年前に私のブログで書きました。http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2011-12-07
  JAL不当解雇撤回裁判は、今年3月、一審の東京地裁判決で、会社側主張を丸呑みし解雇を容認する不当判決が出されています。大集会が開かれたこの日は、控訴審勝利をめざす全国キャラバン行動の集結の日であり、東京高裁で第1回の控訴審(パイロット原告団71名)が開かれた日でした。
 集会は全労協議長の金沢さんの開会あいさつ、裁判の報告を弁護団長の上条弁護士がおこない、続いて構成劇『必ず勝つで、ごJAL』(劇団「げんこく」)が上演されました。
 裁判原告団のみなさんが、企業の横暴な「首切り」を許してはいけない、採算優先のJALフィロソフィによる過密労働と運航の危険性、安全な航空にはベテランのパイロットと客室乗務員が必要なことを熱演し、観衆の笑いを誘いながら分かりやすく訴えました。
 ベテランの職員を解雇する一方で、JALは利益を上げ、これまでに新たな客室乗務員を940人採用(10月までに650人が入社)しています。これはこの解雇が、表向きは「会社更生手続」を理由にしながら、労働組合を敵視した不当労働行為であることを物語っています。「首切り自由の社会」を許さない、労働者・国民の声を集めて、JAL不当解雇撤回裁判を勝利させましょう。
JAL解雇撤回国民共闘のホームページはこちらです。http://www.jalkaikotekkai.com/index.html
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公務員の政治活動を一律に禁止することはできない

 12月7日、最高裁第二小法廷において、堀越事件(2004年3月)と世田谷事件(2005年9月)について、いずれも上告を棄却し、堀越さんの無罪を確定しましたが、宇治橋さんを有罪とする高裁不当判決を維持しました。
 国公法弾圧事件弁護団と国公法弾圧2事件の勝利をめざし、公務員の政治的・市民的自由をかちとる共闘会議は、それぞれ声明を出し、言論・表現の自由を保障する憲法21条に違反する国公法・人事院規則について、最高裁判所が違憲判断を行わなかったことに抗議しました。また、堀越さんの無罪確定によって、国公法・人事院規則で示されている政治活動の禁止については限定的であるべきとの判断が示され、管理職的地位になければ、勤務時間外に職場を離れた場所で政党ビラを配布することは自由であるとされ、「言論・表現の自由を求める長いたたかいのなかでの大きな前進である」と述べました。
 堀越さん、宇治橋さん、弁護団のみなさんの長期にわたるご奮闘に心から敬意を表します。私たちは、引きつづき国公法・人事院規則の違憲性をただし、維新の会や自民党などが企図する地方公務員の政治活動を禁止する地方公務員法改悪と政治活動禁止条例の制定を許さない世論と行動を広げていかなくてはいけません。
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【声明】国公法弾圧2事件の最高裁判決について
                            2012年12月7日
 国公法弾圧2事件の勝利をめざし、公務員の政治的・市民的自由をかちとる共闘会議

 本日、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は、国公法弾圧2事件について、いずれの上告も棄却する判決を言い渡した。堀越事件については、無罪を確定させ、世田谷事件については、不当にも有罪判決を維持した。
 2事件は、国民の言論・表現の自由と公務員の権利を争うものであり、私たちは最高裁に対して、大法廷に回付し、1974年の猿払判決を変更して「国公法は憲法違反」との判断を求めてきた。
 2事件は、いずれも国家公務員が休日に職場とは離れた場所で政党のビラを配布したものである。仕事や職場に何ら影響はないことが公判でも明らかにされ、厚労省、社会保険庁並びに人事院からも何の注意も処分もなかった。東京高裁では、堀越事件では一審の不当判決(罰金10万円・執行猶予2年)が破棄され逆転無罪判決、世田谷事件では、猿払判決を形式的に適用して、有罪(罰金10万円)が維持された。
 この相対立する判決について、最高裁に対して、憲法を尊重する立場から統一的な判断が求められていた。この裁判に国民が高い関心をもっていることは、私たちが集めた18万の署名にも示されている。最高裁が、この要求を拒否し、口頭弁論さえ開くことなく2事件の判決を言い渡したことに対し、強く抗議するものである。

 今回の最高裁判決は、国公法の政治活動禁止規定について、「公務員の職務遂行の政治的中立をそこなうおそれが実質的に認められるもの」が禁止の対象になると限定的に解釈した。
 そのうえで国公法弾圧堀越事件については、「堀越さんの行為は、公務員の職務の政治的中立をそこなうおそれが実質的に認められるとはいえない」とし、堀越さんの無罪を4人の裁判官全員一致で判決した。これは事実上、国家公務員の政治活動を全面的に刑罰で禁止する国公法と人事院規則を合憲とした猿払事件最高裁判決を変更するもので、憲法に保障された国民の重要な権利である「言論・表現の自由」を求める長いたたかいのなかでの大きな前進である。
 一方、世田谷国公法弾圧事件については、宇治橋さんを「管理職員等」にあたるとして「指揮命令や指導監督等をつうじて他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼすことのできる地位にあった」と不当な解釈を行い、「勤務外のものであったとしても」「当該公務員およびその属する行政組織の職務の遂行の政治的中立性がそこなわれるおそれが実質的に生ずる」とし、有罪判決を維持したものである。しかし、これには、須藤正彦裁判官の「宇治橋さんも無罪とすべき」との反対意見が付けられている。
 今回の判決は、「すべての公務員に対して、勤務外も含めて一律全面的に政治活動を禁止」した『猿払判決』と大きく矛盾するものであり、大法廷回付をして猿払判決を見直すべきであった。

 いま、脱原発・震災復興・消費税問題など日本の将来の重要課題について、さまざまな意見を持つ人びとが自由に声をあげて行動し、「表現の自由」「知る権利」が保障されることが一層求められているなかで、堀越事件の無罪判決の確定は大きな意義を持つ。そして、堀越さんを尾行・盗撮して国公法違反事件を立件した公安警察に対する批判となるものである。
 また、最近日本維新の会や自民党など、この政治活動禁止規定を地方公務員にまで広げて、公務員を統制しながら強権的な政治をすすめようとする動きが強まっており、今回の判決はこうした動きに歯止めをかけるものとなる。公務員一人ひとりが自分の考えを持ち、自由にものが言えてこそ、国民や住民の立場に立った行政をすすめることができる。
 私たちは、9年近くにわたるたたかいのなかで、支援していただいた皆さんに心から御礼申し上げるとともに、ひきつづき言論表現の自由を守り、公務員攻撃の強権政治を許さないためにたたかうものである。
                  以上

2012年12月3日月曜日

歴史的な総選挙に臨んで

 衆議院の解散による総選挙が、今月4日公示、16日投票で行われます。
 私が、「歴史的な総選挙」と考えるのはいくつか理由があります。
 一つは、政権与党の民主党が、公約違反の消費税増税を、自民党、公明党との三党合意(談合)で法案を強行成立して解散されたということです。歴代自民党政権は、度重なる庶民増税と社会保障の切り捨て、労働法制の規制緩和による派遣労働の拡大と正規雇用の縮小によって、貧困と格差を拡大してきました。「大規模開発よりも福祉と子育てに国の予算を使って欲しい」、「労働法制の規制を強めて欲しい」という願いで誕生した民主党政権が、国民の期待を裏切って、自民党型の政治に陥ってしまいました。これに対する審判を下す選挙だということです。
 二つめは、3・11東日本大震災と福島第一原発事故という戦後最大の試練のなかで、「これまでの経済効率優先の社会でいいのか」が問われているということです。日本は、もともと農業や漁業で経済の土台をつくってきた国です。台風や豪雨による災害で、農業が壊滅的な打撃を受けても、農家の頑張りと行政の支援で再建、再起を繰り返してきました。しかし、原発事故はそれをできなくしました。そしてこれまで必要悪と考えられてきた原発の放射性廃棄物は、絶対悪であるという認識が広がりました。直ちに原発をゼロにすること、TPP交渉への参加をやめさせて日本の農業・漁業を守ることが、3・11を経験した国民が選ぶ道だということです。
 三つめは、沖縄の駐留米軍による犯罪が相次ぎ、「未亡人製造機」とアメリがで呼ばれているオスプレイの配備が強行されるなど、日米安保条約の害悪が多くの国民の目に見えるようになりました。日米安保条約を廃棄して、米軍基地を撤去させることが大きな争点になります。憲法九条の改悪を公言する政治家が力を増していることも重大です。憲法九条を生かした平和外交をしっかりと行なえるかどうかがこの選挙で問われています。
 私のブログで書いてきた平和への願いを、一歩でも二歩でも前に進めたい、そんな想いです。

2012年11月26日月曜日

大企業がため込んだ内部留保をはき出して雇用拡大を!

 民主党政権とそれ以前の自民党・公明党連立政権がすすめてきた大企業減税の恩恵を受けて、不況の中でも大企業は内部留保をため込んでいます。「企業の内部留保の主要部分である利益剰余金が上位20社(上場企業)で2011年度に前年度よりさらに約1兆4500億円増えたことが本紙(しんぶん赤旗)の調べで分かりました。11年度は上位20社合計で62兆8395億円。10年度は61兆3892億円、09年度は59兆977億円でした。日本経済が低迷するもとでも内部留保を着実に増やしています」【しんぶん赤旗11月25日付】
 いま、衆議院選挙の争点に景気対策があがっています。大企業本位の政策を続けてきた歴代の政権与党とそれを応援するマスコミは、「金融緩和」でデフレを脱却するという政策を宣伝しています。しかし、派遣労働者や非正規雇用の拡大、公務員の賃金カットで給与水準が大幅に下げられ、無法なリストラ・首切りの横行で失業者が増えていることを放置して、インフレ政策(物価上昇)をとれば、貧困と格差の拡大はいっそうひどいことになります。
 日本共産党の市田忠義書記局長は今月23日、滋賀県内で開かれた演説会で、「国民の暮らしと営業が大変なときに消費税が増税されたらたまったものではない」と述べ、消費税増税に頼らず、社会保障の充実と財政危機打開の道を示した日本共産党の経済提言を詳しく紹介しました。市田氏は、消費税に頼らない財源確保策として(1)政党助成金や軍事費、原発推進予算など、予算の無駄遣いの一掃、(2)大企業や富裕層に能力に応じた税負担を求める―ことを提言。こうして得られた財源で、子どもの医療費窓口負担ゼロ、国民健康保険料の1万円引き下げなどの社会保障の拡充を行い、暮らしに安心を取り戻して経済を活性化させることができると主張しました。さらに、大企業による無法なリストラ・首切り計画をストップさせ、雇用のルールや、大企業と下請け中小企業との公正な取引ルールを確立し、大企業にため込まれている潤沢な内部留保を国内市場に還流させることを提案。「こうすれば、内需が活発になり、デフレからも脱却できる。税収も増え、社会保障の充実と財政再建の両方を無理なくすすめることができる。企業・団体献金を一切受け取らない日本共産党の躍進で消費税に頼らない別の道、明るい希望ある道に踏み出そう」と訴えました。【しんぶん赤旗11月24日付・要約】

TPP参加は国をこわす道(2)

 TPPが日本の農業に大打撃を与えることはよく知られていますが、医療や保険に与える影響は、まだあまり知られていないかもしれません。
 そもそもTPP交渉とは何なのか。もともと2006年に発足したシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Economic Partnership agreement)通称P4協定に参加する交渉で、2008年9月、米ブッシュ政権の通商代表部のシュワブ代表が「米国のP4への参加は、将来の米国の国際競争力強化につながり、成長と富をもたらす。特に、現在直面している不確実な時代にあっては、国際貿易の活性化は、米国経済の健全化にとってきわめて重要である」としてP4のすべての分野に参加するための交渉に臨む意向を表明。2009年11月、オバマ政権がTPP参加を表明し、2010年3月から現在のTPP交渉がオーストラリアのメルボルンで開始されました。日本政府は、野田総理の「交渉参加に向け関係国との協議に入る」ことの表明を受け、今年1月にベトナム、ブルネイ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランドとTPP参加に向けた協議を行っています。このなかでオーストラリアとニュージーランドは包括的関税撤廃を日本が認めなければ、交渉参加を認めない立場を表明。米国政府とは2月に協議を行った時、「センシティブ品目の取り扱いについて関税撤廃からの除外があり得るのか」との日本政府の質問に対して、米国政府は「TPPは包括的な協定をめざしている」と一蹴しています。
 米国におけるTPP推進機関は「TPPのための米国企業連合」で、108社の多国籍企業を中心とした企業と業界団体が参加しており、たびたび米国政府にTPPに対する要望書提出しています。全米貿易協議会は「日本は、深く根ざした関税及び非関税障壁を撤廃する約束と政治的意志を示す必要。具体的には、為替の操作、自動車、保険、金融サービス、建設、建築、エンジニアリング、情報通信、医療及び農業を含む」とし、日本がこれまで築いてきた経済のルールや規制などを撤廃させて、アメリカに企業が参入できるように求めています。アメリカには日本のような公的医療保険がなく、個人が民間の保険会社と契約をしており、TPP交渉の参加で日本の医療保険制度が切り崩される危険が生じます。
 こうした問題に危機感を持った日本医師会は、昨年11月に「国民皆保険の堅持、医療の安全と安心の確保が約束されない限り、TPPへの参加を認めることはできない。また、TPP交渉参加の議論をきっかけに、医療の営利産業化を推進する考えが広がることも懸念される」との見解を表明し、3月には「日本医師会はこれまで、政府が、TPPにおいて日本の公的医療保険制度を除外することを明言するように求めてきた。しかしこのことについて政府からいまだ明確な回答はない。……日本医師会は、あらためてTPP交渉参加に反対の立場を明確にすることとした」と表明しました。
TPP交渉参加で、関税を撤廃して農業を破壊し、医療や食料の安全と安心を守っている規制を外すことは、一部の輸出企業が栄えても、根本において日本の国をこわす道です。

TPP参加は国をこわす道(1)

 突然の解散総選挙に踏み切った野田首相の狙いは、各方面からの反対が強まるTPP(環太平洋連携協定)参加を争点にして、選挙後に決行しようということです。財界が要求するTPP交渉への参加は、日本の農業を破壊し、医療を荒廃させることがこれまでも指摘されてきましたが、総選挙を目前にして再びこの問題を考える必要があると思います。
 全国農業協同組合中央会などが今月15日に開いた「TPP交渉参加断固阻止緊急全国集会」で日本共産党の志位和夫委員長があいさつし、決意を表明されましたので紹介します。
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 (前略)先日の所信表明演説で野田首相は、「守るべきものは守りながらTPPを推進する」といいました。(志位は)代表質問で「『守るべきものは守る』というが、『守るべきもの』とは何なのか、具体的に答弁せよ」と迫りました。そうしたら首相は「守るべきものは守ります」。これでは同じですね。ただ、そのあと、「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村は断固として守り抜く」といいました。しかし、そのすべてを破壊するのがTPP参加ではないでしょうか。TPPは「例外なき関税撤廃」を原則としています。これに参加してどうして「美しい農村」を守ることができましょう。TPPは「非関税障壁の撤廃」を原則としています。これに参加すれば、混合診療の全面解禁、医療への株式会社の参入などで、「世界に誇る医療制度」が破壊されてしまうことは、いまや明瞭です。TPPに参加して「守るべきものは守る」など、ありえないということを私はいいたいと思います。すべてを失って、丸裸にされ、アメリカに経済主権を丸ごと売り渡す「亡国」の政治には、日本共産党はみなさんとスクラムを組んで断固反対を貫くことを表明します。
 世論も大きく変化しています。全国の市町村の議会の実に9割がTPP参加反対を決議しています。いよいよ総選挙です。相手は「TPPを選挙の争点にする」といってきました。受けて立とうではありませんか。この総選挙で私たちは、TPPがいかに日本の農業にとって有害なのか、日本の経済にとって有害なのか、日本国民にとって有害なのか、徹底的に明らかにして、国民の多数がTPPに反対の意思を表明するようにがんばりたいと思います。みなさん、TPP賛成・推進の議員、政党には残らず総退場してもらおうではありませんか。日本共産党は、最後までみなさんとともにがんばりぬく決意を申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。
【「TPP交渉参加断固阻止緊急全国集会」日本共産党・志位和夫委員長のあいさつ】

2012年11月17日土曜日

雨の中を意気高く「原発なくせ」のコール~「11.11反原発1000000人大占拠」

 今日、冷たい雨の中で、霞ヶ関にある省庁と国会議事堂前、官邸前を包囲する大規模な抗議行動が、首都圏反原発連合主催(協力:さようなら原発1000万人アクション/脱原発世界会議/原発をなくす全国連絡会/経産省前テントひろば)により行われました。
 私は午後3時から文部科学省前の抗議行動に参加し、午後5時から冷えた身体を温めるために地下鉄の改札付近で休憩して、5時半頃から夜7時まで桜田門から国会正門前の歩道を往き来しながら抗議行動に参加しました。
 文科省前には、インスタレーション(作品を単体としてではなく、展示する環境と有機的に関連づけることによって構想し、その総体を一つの芸術的空間として呈示すること)が展示され、その中心に1954年3月、ビキニ環礁沖で被ばくした第五福竜丸の無線長の久保山愛吉さんの遺影と「原水爆の犠牲者は私を最後にして欲しい」の言葉が掲げられていました。昨日ブログに書いたNHKのニュース「埋もれていた核実験被害 訴え続ける元教師」を思い起こしながら、福島の子どもたちを守らないといけないという想いを、集まったみなさんと共有しました。
 国会前抗議エリアは、たいへん混雑して歩道スペースと待機スペースをコーンで分離していましたが、なかなか前に進めす、雨も本降りになってきましたので、周辺の人の傘から雨が伝わり落ちてきてだいぶ濡れてしまいました。ファミリーブロックあたりで立ち止まり、「原発なくせ」「再稼働反対」「子どもを守れ」のコールをしました。(写真)
 国会前通り対岸の大集会メインエリアからは、宇都宮健児さんのスピーチが聞こえてきました。都知事選挙への出馬表明をされた宇都宮さんは、今回、デモ出発のための日比谷公園使用が不許可にされたことに対して「集会、デモの自由、表現の自由は、憲法上の基本的な人権であり、民主主義社会に無くてはならないものだ」と訴え、「東京から脱原発を!」と力強くアピールしました。女優で写真家の松田美由紀さんもかけつけてスピーチされました。最後まで参加して、名残惜しく帰路につきました。
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タグ:原発

2012年11月10日土曜日

埋もれていた核実験被害-ビキニ環礁水爆実験の被災者を追う

 今日、NHKのおはよう日本で、「埋もれていた核実験被害 訴え続ける元教師」が報道されました。1954年3月1日、ビキニ環礁で米国の水爆実験が行われ、第五福竜丸が被災して乗組員23名が帰港後にすぐ入院し放射能症と診断され、9月23日に久保山愛吉さんが亡くなったことは、多くの人が知っていると思います。このときに1000隻もの漁船が放射能を浴び、放射能に汚染された魚を処分させられたこと、それらの漁船の乗組員のなかに、体調不良を起こして自殺したり、40代、50代でガンで亡くなった人がいることはあまり知られていません。それは、アメリカが200万ドルの慰謝料を払うことでビキニ事件を決着することを日米両政府が合意し、被ばく者の追跡調査などを一切行わなかったためです。支払われた慰謝料は、漁業被害に費やされ、健康被害がその後問題にされることはありませんでした。
 高知県の元高校教師、山下正寿さんは室戸市や宿毛市、幡多地域のビキニ核実験被災者を訪ね歩き、健康調査を行い、埋もれていた被爆の事実を掘り起こしてきました。この活動は、今も高校生たちが参加する幡多ゼミ(幡多高校生ゼミナール)によって受け継がれています。被災者たちの証言は山下さんの著書『核の海の証言―ビキニ事件は終わらない』にまとめられています。
 山下さんは、「まだ解決していませんよ。ビキニ事件は終わっていませんよ。被災者は放置されたままです。こんな重大な人権上の問題が、この日本の中で、現代史から消されていいのかということを訴えていきたい」と話されました。
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2012年10月6日土曜日

グローバルフェスタ JAPAN 2012

 10月6日~7日、東京・日比谷公園でグローバルフェスタJAPAN2012が開催されています。私は、2010年、2011年に続いての参加です。今年のテーマは「Think Global, Think Green 世界を変えよう。未来をつくろう。」です。
DSC00415.jpg 今年は、同じ日比谷公園で「全国都市緑化フェアTOKYO」が開催されていて、ガーデンコンテストやたくさんの花で飾られた「みどりの日時計」などが展示されていました。
 最初にグリーンエリア(人権・緊急援助・農村開発・ジェンダー・ネットワーキング・教育・収入向上・その他)に足を運び、JVC(日本国際ボランティア センター)のブースで卓上カレンダーとダチョウをかたどったキーホルダーを買いました。メインステージからはゴスペルLIVEの歌声が聞こえていましたの で、最後の方だけ聴きに行きました。

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午後1時からは、メインステージで「押切もえが見つけた絆~ブータンの人々とエコライフ」が始まりました。司会は伊藤聡子さんで、現地の様子を押切もえ さん、田儀耕司さん(日本環境教育フォーラム)、大島歩さん(JICA)がお話しされました。「なんとかしなきゃ!プロジェクト」メンバーの押切さんが、 今年6月に幸せの国ブータンを訪れました。ブータンの人々がダショー(最高の人)とたたえる西岡京治(けいじ)さんは、海外技術協力事業団に所属して活動 した日本人農業指導者でブータンの農業の発展に大きく貢献しました。彼の功績がたいへん大きかったので日本とブータンは強い絆で結ばれています。ブータン は環境保全のために毎週火曜日を「ノーマイカーデー」にしています。その日、授乳のために自動車で職場に通わなくてはいけないお母さんは、お仕事が休みに なるそうです。川にかける橋の建設や電力の開発でも、経済性よりも環境保全にたいへん配慮をしています。学校の教育は、国語(ゾンカ語)以外は英語を使っ て授業が行われ、小さな国でも国際人を育てる力の入れようです。GNH(国民総幸福量)という考えでバランスのとれた経済政策が進められ、「2020年に 途上国から自立」を目標にしています。
 午後2時からは、藤原紀香の「地球VOCE」トークショーでした。藤原さんは、昨年に続き、9・11同時多発テロの後、戦争に苦しむアフガニスタンの人々を焦点にしたテレビ報道、写真展にたずさわったことなど国際協力への想いと、テレビ東京のドキュメンタリー「地球VOCE(ボーチェ)」 の取材で、2011年12月にスリランカを訪れ、7年前にスマトラ沖地震で津波の被害を受けた大きな傷跡をみて、特に子どもの心のトラウマが深いことなど を話されました。そして、国際協力は、企業が行っているものや、趣味やスポーツをとおして行われているものなど、多彩な活動があって、日本で普通に生活し ながら関わることができるので見つけて欲しいと紹介されました。
 メインステージで充実したお話を聞いて、ブルーエリア(国際機関・保健医療・環境・児童労働撲滅・平和・その他)とホワイトエリア(外務省・JICA・JANIC・企業CSR・その他)のブースを見学して帰路につきました。

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2012年9月25日火曜日

9.25緊急!経団連会館前抗議

 9月18日、経団連、経済同友会、日本商工会議所のトップが都内で合同記者会見を行い、政府が閣議決定しようとしていた2030年代に原発ゼロを目指す 方針に反対の立場を示しました。こうした経済界の圧力を受けて、19日、政府は2030年代に「原発ゼロを目指す」新しいエネルギー政策「革新的エネル ギー・環境戦略」の閣議決定を見送ってしまいました。今日25日、首都圏反原発連合の呼びかけで、9.25緊急!経団連会館前抗議行動が行われました。緊 急の呼びかけにもかかわらず、約1300人が集まり、日本経団連の米倉会長の発言への怒りの抗議と「原発なくせ」「今すぐなくせ」「子どもを守れ」のコー ルを2時間ぶっ通しで経団連会館に浴びせました。
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2012年9月24日月曜日

オスプレイ“沖縄配備”の深層

 今日(9月24日)放送のNHKクローズアップ現代は、「オスプレイ“沖縄配備”の深層」でした。
 いま、山口県にある米軍岩国基地を拠点に試験飛行を繰り返している米軍の輸送機・MV-22オスプレイは、今月中にも沖縄普天間基地に配備されようとし ています。9月9日にオスプレイ配備に反対する大規模な県民大会が開かれた沖縄県では、「地域安全政策課」を立ち上げ、アメリカの国防戦略を独自に研究 し、オスプレイの最新情報を集めています。そして、最近のオスプレイ墜落事故の原因をはじめ、騒音など住民の生活に与える影響の調査を日本政府に求めてい ます。
 植村秀樹 さん(流通経済大学教授)は、「沖縄県は日本政府の対応を待っていられない。待っていたら県として県民のいのちや暮らしを守れないということで動き出し た。その思いの強さと不信の深さを感じる」「住民の思いに応える仕組みがないことがいまの日本の問題だ」「冷戦時代は国家の枠組みを守ることが安全保障政 策だったが、いまは国民のいのちと暮らしを守ることがなければ安全保障政策としては完成しない。政府はそれに応えていない」「国は『丁寧に説明をする』と 言うが一方通行だ。それに対して疑問があるなら、また合意したことが守られない事態があれば、地域の声、自治体の声を政府が受け止めて対応していくといっ た双方向のプロセスを積み重ねる。必要があればアメリカ軍にも要求する。検証し、同意・合意をつくっていく丁寧なプロセスが必要」「いままでのように政府 は受け身でいるのではなく、日米安保に関してもただアメリカのいうことを聞くのではなく、国民の声をきいて地域の事情を把握して、地域にもアメリカにも対 応していくことをしなければ信頼は生まれないし、信頼のないところに安心はない。住民が安心できて、国民が安心できて、はじめて安全保障政策だと言える」 と、日本政府の対応を厳しく批判しました。
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2012年9月22日土曜日

財界本位・アメリカ追従の政治勢力による改憲に断固反対

boox_bk-4761706848.jpg いま、一部の大企業だけが儲けを蓄えて、勤労者のほとんどが所得を減らし、貧困が拡大しています。自民党、民主党などの改憲勢力は、不安と不満を強める 国民を「決められる政治」という言葉で弄しながら、消費税増税と社会保障改革(改悪)を強行し、閉塞感を打開しようとしています。しかし、こうした政策の 行き着く先は、さらなる貧困の拡大と不況・失業の増大であることは火を見るよりも明らかです。
 私は、改憲を主張する政治勢力が「集団的自衛権の行使」を強く求めていること、それによって自衛隊がアメリカの戦争に加わり人殺しの武器を使用すること が起こりうると心配しています。憲法九条は、自衛隊が戦闘行為に加わることを許していません。しかしこれまでも、自衛隊をアフガニスタン戦争の後方支援と してインド洋に派遣したり、イラク戦争では自衛隊が多国籍軍の武装兵員を輸送するなど、憲法違反が行われてきました。軍事費を日本に肩代わりさせたいアメ リカと、武器産業で利益を得ようとする財界の要求が、改憲勢力を後押ししています。
 今年8月に学習の友社から出版された『改憲をめぐる新たな情勢と憲法を生かすたたかい- 憲法問題学習資料集[4]』を読んで、改憲をめぐる現状と課題、運動の展望が見えてきましたので紹介します。
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『改憲をめぐる新たな情勢と憲法を生かすたたかい- 憲法問題学習資料集[4]』
   憲法会議・労働者教育協会/編 (学習の友社、2012年)

 本書は題名どおり「資料集」ですが、冒頭で憲法会議・代表幹事の川村俊夫さんが解説を書かれています。私なりに短く要点をまとめました。
◆2007年5月、安倍内閣のもとで改憲手続法(日本国憲法の改正手続に関する法律)が強行成立したが、参院憲法審査会規程が整わずに始動できずにいた。 2011年10月、野田首相のもとで衆参の憲法審査会に息が吹き込まれた。◆2007年7月の参院選挙での自民党惨敗で小泉内閣以来の構造改革路線と「戦 後政治のレジームからの脱却」を掲げた改憲路線に国民が「ノー」をつきつけた。2009年総選挙で政権交代した民主党政権は、発足当初の国民の声に応える 政策は息を潜め、「構造改革」、日米同盟強化の道に踏み込み、「自民党以上に自民党的なやり方」で行き詰まりを乗り切ろうとしていること。◆憲法審査会発 足を機に、今年4月には自民党が「日本国憲法改正草案」を発表し、みんなの党、たちあがれ日本も改憲の基本構想を示し、民主党は党憲法調査会の活動を開始 した。さらに、民主、自民、公明、みんな、たちあがれ日本などの議員たちが「新憲法制定議員連盟」の動きを強めている。◆これらの改憲論がいずれも時代逆 行的な内容であり、それは、戦後日本の支配者たちが明治憲法の思想を克服していないこと、アメリカが日本を「反共の防波堤」にする政策のもとで、警察予備 隊を発足させ、公務員の労働基本権を剥奪するなど、日本国憲法に反する占領政策を率先して実行してきたことに通じている。近代立憲主義のもとでは憲法は権 力者に対する国民からの命令文書であるにもかかわらず、自民党の改憲案は「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とし憲法を国民支配の道具にし ようとしている。◆自民党、みんなの党、たちあがれ日本の改憲案・改憲構想は、共通して天皇は「象徴」であると同時に「元首」であるとし、国民の主権者意 識を縮減する道具にしようとしている。◆9条について自民党案では、「自衛権の発動」による武力行使を許し、「国防軍」をもつことや軍事機密を守る法律の 制定などを盛り込んでいる。国民の基本的人権についても「自由及び権利には責任及び義務が伴う」ことを強調。いずれの案・構想も、大規模災害や有事の際に 内閣総理大臣に「緊急事態の宣言」・政令の制定・財政措置を認め、国民にその指示に従うことを義務づけるとしている。◆背景にあるのは、財界とアメリカの 強い圧力であること。野田内閣は、普天間基地の辺野古移転を画策しつづけ、武器輸出や他国との共同開発を可能にするために武器輸出三原則の形骸化を進めて いる。◆財界はその要求を国民に押し付けるために、比例代表議席を全廃し、圧倒的に第一党が有利になる単純小選挙区制の採用によって保守「二大政党」の実 現を求め続けていること。くわえて、民主、自民が失った国民の支持をとりこんで、より反動的な政治を実現しようと橋下徹大阪市長が率いる「維新の会」が国 政への進出をねらっていること、その手法は思想の自由を無視した処罰の脅しで職員を服従させる職員基本条例や、教育に行政が公然と介入し競争をあおる教育 基本条例など、憲法の基本原則を根本から無視したファッショ的なものである。◆最後に、基地被害に苦しむ沖縄県民、福島第一原発事故の被災者と放射能汚染 に苦悩する人々など、困難な状況を主権者として打開するために、かつてない広がりをもった共同の輪がつくられていること、「九条の会」が全国各地につくら れ、学習会や講演会、署名活動、街頭での宣伝行動などを日常的に行っていること、国会では改憲を支持する勢力が2/3を超えながら、具体的に改憲に着手で きないのは、草の根におけるこうした国民の団結があるため。日本国憲法の先駆性・先進性への確信をさらに多くに人々に広げるなら、それは新しい日本を実現 する道につながる。

2012年9月21日金曜日

米軍核兵器持ち込みと「事前協議」密約

 9月20日、「平和と労働センター」(東京都文京区)で、オスプレイ配備に反対する沖縄県民に連帯する学習企画「核密約調査幕引きと『非核2原則』化の たくらみ -オスプレイ強行配備にも幅利かす“事前協議密約”」が開催されました。講師は、国際問題研究者の新原昭治さんでした。
 民主党は政権交代直後の2009年9月、岡田克也外相のもとで対米秘密交渉による「密約」の調査を開始し、2010年3月9日、核密約など4つの日米密 約に関する調査報告書が出されました。核兵器を積んだ米軍艦船の寄港が「事前協議」なしにできるとした密約などの存在が明らかにされましたが、民主党政権 は核密約をやめさせる対米措置をいっさいとらなかったこと、「非核3原則」の第3原則である「核兵器を持ち込ませず」を壊す方向で動いていることを新原さ んは指摘しました。1960年日米安保条約改定時に結ばれた核密約は、「非核3原則」と相容れないもので、米軍の核武装をアジアで野放しにするものです。 日本の原水爆禁止の世論と運動を恐れた米政府は米軍艦船への核兵器積載について否定も肯定もしないNCND《 Neither Confirm Nor Deny 》を政策としました。自民党政府は「核密約」を隠して「事前協議」がないから核の持ち込みはないとウソをついていました。
 私は、こうした戦後史の事実を踏まえて、ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ、原水爆禁止の国民世論をもっともっと大きくして、日本政府に「非核3原則」を厳 守させなければいけないと思いました。「事前協議」密約は核持ち込みの問題に限らず、米軍の配置や装備のあらゆることに渡ります。したがって、いま強行さ れようとしているオスプレイ配備の問題にも通じています。アメリカいいなりの「事前協議」密約を広く明らかにして、核兵器と基地のない平和な沖縄・アジア を実現するために声を上げていきましょう。
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2012年9月19日水曜日

脱原発デモ in 船橋/Go! Go! 黄色い電車連合プレゼンツ

 今日(9月17日)は、船橋で脱原発デモ/Go! Go! 黄色い電車連合プレゼンツ が行われ、1100人が参加しました。
 14時からJR船橋駅近くの天沼弁天池公園で集会(ミニフェス)が始まりましたが、私は少し遅れて参加。首都圏反原発連合のみなさんのトーク、紙芝居、 柏市の新婦人の方のお話し、志位和夫さん(日本共産党委員長)が参加した「原発巨人軍」のパフォーマンスなどを楽しみ、16時にデモ行進に出発しました。 デモ行進では、恒例のDJカーも活躍し、ラップ調のコールで大きく盛り上がりました。
 私は昨日、ドキュメント映画「内部被ばくを生き抜く」をみて、子どもたちを内部被ばくから守ることが何よりも大切だと思いましたので、その思いを込めて「原発いらない」「子どもを守れ」のコールをしました。
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2012年9月16日日曜日

「内部被ばくを生き抜く」/被爆者の声をうけつぐ映画祭2012

 9月14日から16日の3日間、明治大学で「被爆者の声をうけつぐ映画祭2012」が開催されました。私は、最終日、16日の午前中に上映された、鎌仲ひとみ監督の「内部被ばくを生き抜く」を鑑賞しました。
 会場には、写真パネル「ヒロシマとナガサキ 原爆と人間」が展示され、映画上映の後には12歳の時長崎で被爆された山本英典さん(日本被団協事務局次長)のお話しがありました。
 ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下で、かろうじて命をとりとめた被爆者が急性原爆症で次々と命を落とし、さらに5年、10年経ってから白血病やガンによっ て多くの被爆者が亡くなったことの事実の重さを、私たちは改めて考えなくてはいけないと思いました。被爆者たちは、白血病やガンだけではなく、さまざまな 病気に苦しめられています。
 チェルノブイリの原発事故(1986年4月)から25年以上経った今日、その汚染地域周辺の子どもたち現れている健康障害の問題から、内部被ばくや長期 の低線量被ばくのもたらす疫学的な研究も進展しています。放射線がDNAを切断してガンなどを引き起こすことは広く知られていますが、最近ウクライナの研 究によると、長期の低線量被ばくで細胞内のミトコンドリアに異常が生じて、それがさまざまな疫病を引き起こすと指摘されています。
 福島第一原発事故でまき散らされた放射性物質は、東日本の多くの住民に見えない恐怖を与えています。線量計の普及と除染によって外部被ばくの心配がない ところまでいっても、食品や土ぼこりに含まれる放射性物質は、今後長い間、注意していかなければいけません。特に放射能の影響を受けやすい子どもたちに安 全な食べ物と環境を保障することは絶対に必要です。被ばくによる差別や偏見をなくすためにも、正しく放射能の健康被害について知ることと予防することが大 切だと思いました。
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2012年9月9日日曜日

横須賀で、オスプレイ配備反対!原子力空母はいらない!集会・デモ行進

 米原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀に配備・「母港化」されて4年、横須賀市・ヴェルニー公園で、オスプレイ配備反対の沖縄県民大会に連帯する集 会が行われました。原子力空母には、原発と基本的に同じ構造の原子炉が2基積まれています。福島第一原発と同じように大津波に襲われ、致命的な事故を起こ すことは充分考えられることです。昨年9月25日の「米原子力空母ジョージ・ワシントン横須賀配備3年抗議集会」でも、原発ゼロと原子力空母反対を掲げて 集会が行われましたが、今年は原発再稼働反対の首相官邸前デモなどの市民運動の高まりに呼応して参加者からの決意も語られました。また、沖縄宜野湾市で同 時刻に開催された県民大会に連帯してオスプレイ配備反対を掲げました。政府が、アメリカのいいなりに危険きわまりないオスプレイの配備を容認するならば、 日米安保条約を廃棄するしかないという声が、今までになくひろがっています。
 横須賀集会には、2500人が参加し、集会後、米軍横須賀基地前と市街地を通ってデモ行進をしました。
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アピール
 世界一危険な航空機「オスプレイ配備反対」、「原発ゼロ」の日本の実現、
 「原子力空母はいらない」の声と運動をさらに大きく広げましょう

 アメリカの原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀に「母港」配備されて今月25日で4年となります。米空母があるのは米国本土以外では横須賀だけです。そして首都圏にある大型原子炉は横須賀を「母港」とする米原子力空母、原子力艦船だけです。
 昨年3月11日の東日本大震災と東京電力・福島第一原発で発生した大事故は、「原発の安全神話」がくずれ、いまなお続く放射能汚染の深刻さが国民の中に広くうけとめられているにもかかわらず、野田政権は「収束宣言」をおこない、大飯原発を再稼動させました。
 福島原発事故は決して収束していません。今も被災者と被災地は大きな苦しみのなかにあり、被害の賠償も復旧・復興もはかどらず、被災者と避難者の暮らしと権利の回復はすすんでいません。
 「収束宣言」や「大飯原発の再稼動」の暴挙に、7・16「さようなら原発10万人集会」、7・29「国会包囲網行動」など全国各地で「原発ゼロ」の運動 が広がり、市民が自発的に立ちあがった「大飯原発再稼動反対」首相官邸前抗議行動は国民に共感を呼び、マスコミにも大きくとりあげられ、全国各地に「燎原 の火」のごとく広がっています。
 原発と軍事用原子炉は基本的に同じ構造にもかかわらず、日米両政府は原子力空母などの軍事用原子炉は安全だと「安全神話」をふりまいています。三浦半島 断層での地震発生が高まった可能性が指摘されており、空母ジョージ・ワシントンの居座りは一刻も早くやめさせなければなりません。
 本日の集会は、「ジョージ・ワシントンは横須賀から出て行け」を中心スローガンに、「原発ノー」の運動との合流、そして、沖縄と連帯し「オスプレイ配備 反対」をかかげ、神奈川県内と首都圏各地から参集し、米第7艦隊司令部と、在日米海軍司令部のある横須賀の地で開催されました。
 本日の集会では、同時刻に開催している「オスプレイ配備反対沖縄県民大会」に横須賀からエールをおくり、墜落事故を繰りかえす欠陥機「オスプレイ」の世界一危険な普天間基地への配備をやめさせ、全国各地での低空飛行訓練の中止を求めることを確認しました。
 日米安保をタテに、横須賀、神奈川、首都圏の平和と安全を脅かす「海に浮かぶ原子炉」、
ジョージ・ワシントンは一刻も早く横須賀から出て行け、原発NO、オスプレイ配備反対の運動を広げ、「税と社会保障の一体改革」と消費税大増税を撤回さ せ、国民の命と平和、暮らしと雇用、生活を守り、基地もない安心して暮らせる日本を実現するために、力を合わせることを呼びかけるものです。

2012年9月9日
       さよなら原発!オスプレイ配備反対・沖縄連帯!ジョージ・ワシントンは
           横須賀から出て行け!原子力空母の横須賀母港化反対9・9集会

2012年8月27日月曜日

いま「慰安婦」問題から見えてくるもの

 今日、子どもと教科書全国ネット21から、NEWS VOL.85(8月15日付)と資料・チラシが届きました。
 一番目についた記事が、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」館長の池田恵理子さんが書かれた「いま『慰安婦』問題から見えてくるもの」でした。
 最近、竹島問題をめぐって、韓国による強硬姿勢が日韓関係を緊張化させていますが、池田さんのエッセイを読んで、日本政府とマスコミが「慰安婦」問題に 真摯に向き合わず、戦争犯罪の真実を隠蔽しようとしてきた問題が韓国の国民の反日感情をかっていることが良くわかりました。
  2000年12月に開かれた日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」を取材したNHKの報道番組が放送直前に改ざんさせられ、裁判にもなった事件については当時私のブログでも紹介しました。http://s-mituru.blog.so-net.ne.jp/2005-01-15
 池田さんは、表題のエッセイの中で、「慰安婦」問題をめぐる日本の戦争責任の取り方が、日本の民主化のものさしになることを次のように述べています。
 ~2011年、「慰安婦」問題は久しぶりに国際的にもスポットを浴びたが、日本のメディアの大半は政府の主張を追認するだけだった。ソウルで1000回 目の水曜デモが行われた12月14日には、東京でも1300人の市民が集まり、外務省を「人間の鎖」で囲んだ。そこに右翼が押しかけ、凄まじい罵声でヘイ トスピーチを浴びせた。マスコミ各社は取材にはやって来たものの市民の声は取り上げず、韓国の「平和の碑」を批判して「日韓のナショナリズム対決」と煽る ばかりだった。ここには日本の右傾化とともに、戦争の歴史や「慰安婦」問題を学ぶ機会がなかった若い記者たちの限界を見る思いがした。・・・・(中 略)・・・・ 日本が過去の戦争責任に向き合い、「慰安婦」被害の事実を認めて謝罪と個人賠償を行わないかぎり、国内では戦争加害の記憶を封殺する勢力を 増長させ、国際社会からは「戦争責任を取れない国」として蔑まれ続けるだろう。自国の戦争責任に向き合える社会が実現するのは、日本が真の民主化を達成し た時である。私たちはいかに困難であろうとも、この道を歩み続けるしかない。(いけだ えりこ)~
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2012年8月25日土曜日

子どものいのちと人権が守られる学校、社会を築くために

 遅くなりましたが、8月17日から19日まで、神戸市で開催された「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい 教育研究全国集会2012」の報告です。
 1日目は、神戸国際会館で開会全体集会が開かれ、オープニングで藤波心さんが原発・放射能の危険から子どもを守る教育のあり方を訴え、また脚本家の渡辺 あやさんが「作ること、学ぶこと」と題して講演され、創作・表現することをとおして「だれかの生きる力になりたい」という思いを話されました。全体集会の 後、7つのフォーラムに分かれて、子どもと教育をめぐるさまざまなテーマでシンポジウムを行ないました。私は、「崩れさる『原発安全神話』から見えてくる ものと教育」の受付係をしました。DSC00278.JPG
 2日目・3日目は、教科ごとあるいは課題ごとの分科会が開かれ、実践レポートをもとに交流・討論が行なわれました。また、2日目の夜には緊急シンポジウ ム「子どもたちのいのちを守り、人間として大切にする学校・地域・社会を考えるシンポジウム」が開かれ、中学生いじめ自殺といった痛ましい事件を繰り返さ ないために、教職員、父母・住民、研究者がそれぞれ力を尽くし、声を上げ、協力し合うことが大切だと語り合いました。
 最後に実行委員会の「アピール」全文を紹介します。
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「教育のつどい2012」アピール
子どもたちのいのちを慈しみ人間として大切にする学校・地域・社会を創るために
力を合わせましょう!
- 父母・国民、教職員のみなさんに呼びかけます -

 8月17日から3日間、兵庫県神戸市内で開催した「教育のつどい2012」は、本日すべての日程を終えます。全国からご参加いただいた、のべ7000人 の父母・国民、教職員のみなさまと、地元兵庫県のみなさま方の協力に深く感謝申し上げます。また、メッセージをいただきました兵庫県内の多くの自治体首長 のみなさまにも心よりお礼申し上げます。
 東日本大震災と東電福島第一原子力発電所事故から1年半になる2012年8月。17年前に阪神淡路大震災の甚大な被害を受けたここ神戸市でも復興のシン ボルと言われてきた神戸市国際会館を開会全体集会の会場として「教育のつどい」が開催できた意義をかみしめ、ともに喜びあいたいと思います。
 「教育のつどい2012」は、子どもと教育、子育てにかかわる多くの人々が心から希求する「子どもたちのいのちを慈しみ、人間として大切にする学校・地域・社会について語り合い、深め合った3日間となりました。
 昨年10月の滋賀県大津市における中学2年生の自殺事件。子どもたちのいのちが何よりも大切にされなければならない学校で、なぜこのようなことが起きて しまったのか、「教育のつどい2012」では開会全体集会の代表委員挨拶と討論の呼びかけをふまえて、多くの分科会や教育フォーラムで真摯な討論と交流が 行われました。その中で語られ、共感的に受け止められたのは、次のような点でした。
 「いじめ」を、暴力や人権侵害の問題としてとらえること、教職員が、子どもたちのいのちと人権を守ることを何よりも大切にする感覚をとぎすますこと、そ れはいじめられている子どもに対してだけではなく、いじめている子どもにも同様であること、子どもの中にこそ解決の力があり、それを引き出すことが大切な こと。さらに、保護者、教職員が敵対関係に陥るのではなく、ともに力を合わせた学校づくり、地域づくりが求められていること。そして、「競争と管理」「自 己責任」を基調とした新自由主義的な「教育改革」が子どもたちばかりでなく、親や教職員など子どもに関わる人々に多大なストレスを与え続けており、この抜 本的な改善なくしては根本的な解決は難しいことでした。
 こうした討論をふまえて、それぞれの地域でさらに議論を深めていくことが切実に求められています。
 「教育のつどい2012」は、原発・震災にかかわっては、フォーラムでの討論とともに、19の分科会に50本を超えるレポートが出され、具体的な教育実 践やとりくみについて旺盛に議論を行いました。放射能や原子力発電所について真理・真実を子どもたちと語り合うとともに、被災地の現実を見つめ、子ども自 らが自主的に行動する姿は、まさに子どもとともに未来を創るとりくみです。
 教育目標まで首長が決めるなど、橋下・大阪「維新の会」による教育へのあからさまな介入や、戦後民主教育と民主主義を根本から否定する動きについても、 フォーラムや分科会の中で報告と討論が行われました。これに対して、子どもと父母、教職員、地域住民のねがいに立った運動が元気に繰り広げられていること が口々に語られ、そのねがいを生かした学校と地域づくりこそ大切であることが確かめ合われています。
 再稼働に反対し、官邸前行動、国会包囲、原発ゼロ集会などに、10万人、20万人の人々が全国から集まり、全国各地で多彩な集会が催されています。未来 を生きる子どもたちのいのちを守りたいという声、いのちを最優先する政治を求める共同が、歴史を動かす大きなうねりとなり、その中に子どもと教育を守り支 える力があることを私たちは改めて確認しました。
 全国からご参加いただいたすべてのみなさん、子どもたちと教育の未来に心を寄せるすべてのみなさん。今こそ、子どもたちのいのちを慈しみ、人間として大切にする学校・地域を創るために、力を合わせましょう。

 2012年8月19日 
「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい 教育研究全国集会2012」実行委員会

2012年8月9日木曜日

映画「夏の祈り」~忘れてはならない、あの日の記憶 1945/8/9 am11:02

この夏、見たい映画があります。それは、ドキュメンタリー映画『夏の祈り』(監督:坂口香津美/95分/2012年)です。 T0013272p.jpg

舞台は、長崎にある被爆高齢者のための特別養護老人ホーム「恵の丘長崎原爆ホーム」。ここで生活するお年寄りたちは、訪れる子どもたちに自らの被爆体験を 語り継ぐために、年に数度「被爆劇」を上演しています。この映画は、劇を上演するお年寄りたちの記録を軸に展開。約2年間におよぶ撮影は、人生の晩年を迎 えている被爆者の日々の営み、原爆によって運命を変えられたさまざまな人々の命の輝きを鮮烈に伝えます。

 東京では、渋谷のUPLINKで8/11(土)~ 連日10:30/12:30/16:30 上映。http://www.uplink.co.jp/movie/2012/544
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(「ストーリー」から)http://www.natsunoinori.com/
 原爆ホームでは、入居者(被爆高齢者)がそれぞれ被爆の記憶を忘れないように、また原爆の悲惨さを後世に伝える目的で、職員がそれぞれの利用者とともに 被爆を受けた場所に案内し、聞き取り調査を行っている。本多さんは被爆するまで過ごした児童養護施設の仲間や親代わりだったシスター、カトリック教徒が眠 る墓地を年に一度、訪れる。
 爆心地から約1キロの地点にある長崎大学の構内の一角に、多数の被爆者が眠る場所がある。米軍の手により、原爆投下直後より調査収集された急性被爆症患 者の病理標本だ。長崎大学大学院原爆後障害医療研究施設の助教授、七條和子さんは、被爆者の病理標本から「内部被爆の人体に及ぼす影響」を調べている。原 爆投下から60年以上たった今でも内部被爆により被爆者の病理標本の細胞で放射線を出し続けている事実は衝撃的だ。
 長崎大学病院の医師、長井一浩さんは、原爆ホームで主治医を務めながら、長崎大学の准教授、鈴木啓司さんとともに、被爆者の血液から造血幹細胞を取り出し、被爆により傷ついた遺伝子が人体に与える影響を研究している。・・・・

2012年8月6日月曜日

ナガサキ奇跡の少女、67年目の再会

今日(8月5日)、TBSのNEWS23クロススペシャルで、長崎原爆投下の翌日、焼死体のそばで立ちつくす少女の写真のご本人に、女優の綾瀬はるかさんがお会いして、当時の体験をお聞きする番組を見ることができました。
 私が原爆の日が近くなると毎年のようにめくってみる写真集『ノーモア ヒロシマ・ナガサキ』にもその写真は掲載されています。(2005年、日本図書センター)
 当時15歳だった少女は、龍智江子さん(82歳)で現在福岡県にお住まいです。智江子さんは、8月9日の朝、母に代わって父親と出かけたために、原爆の 被害から逃れることができましたが、爆心地から約300メートルの場所にあった自宅は、跡形も無くなり、母と弟は帰らぬ人となりました。写真に写っている 黒焦げの遺体は、智江子さんのお母さんです。智江子さんが女学校の学徒動員に出た時にお母さんに買ってあげたべっ甲の髪留めがそのままだったので、母だと 分かったそうです。DSC00261.jpg
 そして、智江子さんが見ている視線の先には何があったのかが思い出されました。前の家が歯医者さんだったのですが、その裏庭の防空壕の奥に吹き飛ばされ て、一命をとりとめた7歳の少女・耐子さんを、智江子さんの父親が助け出すところを心配しながら見ていたのです。その翌日、智江子さんは父親と福岡県に移 り住みましたが、その父は体調が急変して、8か月後に亡くなられたそうです。
 耐子さんは現在も長崎市に住んでいて、智江子さんは67年ぶりの再会を果たすことができました。戦後、被爆者はすごい差別を受けていました。特に女性は結婚、出産で苦しい思いをしてきましたので、耐子さんは被爆者であることを公にはしてきませんでした。
 番組の最後に、綾瀬さんは「智江子さんや耐子さんの記憶を胸に刻み、私は祈り続けていきたい。そう思いました」と語りました。
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被爆体験を語り継いでいくこと

明日、8月6日は、ヒロシマ被爆67年の日です。
 年々被爆者の方が高齢化して、永眠されたことを聞くにつれ、被爆体験を語り継ぎ、核兵器廃絶を世界に訴え続けていくことの大切さを痛感します。
 今年、5月9日、広島県医師会長で、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部長の碓井静照さんが、お亡くなりになりました。享年74歳でした。(IPPNWについては、2010年の第19回世界大会声明「バーゼル宣言」を資料に掲載します)
 碓井さんは、8歳の時に爆心地から2.3キロメートル離れた自宅近くで閃光を浴び被爆しました。そして防空壕に運び込まれ、水を求めて息絶えていった人 たちを目の当たりにしたことが、医師を志すきっかけになりました。1998年から広島市医師会長を3期6年務め、2004年に広島県医師会長に就任。地域 医療の充実をけん引するとともに、外国に点在する被爆者の医療支援のために、北米や南米へ現地健診に赴くなど、多くの功績を残しました。また、広島市の平 和式典の平和宣言に盛り込む被爆体験談の選定委員でもありました。
 去年の広島平和宣言の抜粋を紹介しましょう。「8月6日午前8時15分に、一発の原子爆弾でそれまでの生活が根底から破壊されてしまいます。当時16歳 だった女性の言葉です。――『体重40キロの私の体は、爆風に7メートル吹き飛ばされ意識を失った。意識が戻った時、辺りは真っ暗で、音の無い、静かな世 界に、私一人、この世に取り残されたように思った。私は、腰のところにボロ布をまとっているだけの裸体で、左腕の皮膚が5センチ間隔で破れクルクルッと巻 いていた。右腕は白っぽくなっていた。顔に手をやると、右頬はガサガサしていて、左頬はねっとりしていた』・・・・ 被爆者は、さまざまな体験を通じて、 原爆で犠牲となった方々の声や思いを胸に、核兵器のない世界を願い、毎日を懸命に生き抜いてきました。・・・・ その被爆者は、平均年齢77歳を超えなが らも、今もって、街を蘇生させた力を振り絞り、核兵器廃絶と世界恒久平和を希求し続けています。このままで良いのでしょうか。決してそうではありません。 今こそ私たちが、すべての被爆者からその体験や平和への思いをしっかり学び、次世代に、そして世界に伝えていかなければなりません。」
 先日、NHKのニュースで、広島市が「被爆体験を語り継ぐ人」を募集し研修を始めたことが報道されました。20歳代の若い人を含む120人余が参加する 研修で、17歳の時被爆した竹岡智佐子さんが体験を語りました。竹岡さんは被爆した3年後に男の子を出産しましたが、生後まもなく亡くなりました。当時医 師からは原爆が原因ではないかと言われました。「生まれて18日目、さっきまでおっぱいをおいしそうにごくごく飲んでくれた。でももう飲めない。口がこわ ばって、目がうつろになってきた。そして流れるお乳も飲まないで息を絶ちました。お医者さんは、これは原爆病ですよ・・・・」と。受講生たちは、被爆体験 の重さを受け継いで語っていくことの難しさを感じましたが、竹岡さんは「若い人たちに、お元気な方たちに語り継いでいただきたい。それが私の願いなんで す。どうかよろしくお願いします」と話されました。被爆体験伝承者は、約3年の研修を経て、2015年度から広島市の原爆資料館を訪れる人たちに原爆の悲 惨さを伝える活動を始める予定です。
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【資料】
第19回IPPNW世界大会声明
核戦争防止国際医師会議(IPPNW)
2010年8月29日、スイス・バーゼル

バーゼル宣言

 65年前の8月、米国は広島と長崎の上空で世界初の原子爆弾を爆発させた。そして世界は想像もしなかった危機的時代に突入し、未だにそこから解き放たれ ていない。一発の核兵器でひとつの都市を破壊できる。広島級の核弾頭100発で何千万もの人々を瞬時に殺戮でき、地球上の気候を変動させ、飢餓と疫病によ り十億人もの命が失われる。米ロが未だに配備している何千もの核兵器の応酬があった場合、地球そのものが居住不可能な荒廃した土地となってしまう。
 例えば、核兵器が致死性のウィルスで、世界的に蔓延し何億人もの人々が罹患・死亡するほどの威力があれば、世界中の国々が資金を惜しまず提供し、これを 封じ込め、根絶しているだろう。既に天然痘、結核、ポリオでそうしてきた。そして今日、HIV/エイズ、がん、そして新たに出現している病に対して資金を 集結させている。しかし感染症とは異なり、核の脅威は我々自らがもたらした。核兵器は人間が作り出したものである。核兵器のもたらす影響はどのようなウィ ルスよりも恐ろしいものである。しかし核兵器を根絶することは実は容易なことである。核兵器を廃絶するという固い決意とその決意を結末まで見届ける強い意 思さえあればよいのだ。
 IPPNWは、地球上の気候への壊滅的な影響を防ぐ必要性と並んで、世界中の核兵器廃絶が現在の我々の最も緊急な健康と安全保障上の優先課題であると信 じている。赤十字国際委員会(ICRC)、世界保健機関(WHO)、世界医師会(WMA)などの国際的医療保健機関と各国の医師会が、核兵器の廃絶こそが 核兵器の使用を防止する唯一の確かな方法であるという我々の信念に賛同している。
 核兵器禁止条約(NWC)は、全ての核兵器保有国が自国の核兵器を全廃することを求め、全ての国が将来にわたり核兵器を保有することを禁じている。これ が、我々が招いた人道主義の危機を防ぐ最も効果的で実際的な条約である。化学・生物兵器、対人地雷、クラスター爆弾に対しては既にそのような条約が存在し ている。核兵器も同様にとっくの昔に廃棄され、その脅威が取り除かれるべきであった。核兵器が発明されたことを取り消すことはできないが、核兵器を解体 し、再び使用されないように保障することは我々の力でできることである。
 我々は「核兵器のない世界の平和と安全保障」のために努力したいというオバマ大統領のプラハ演説を歓迎した。それから我々は、核兵器廃絶反対派がこの目 標の達成には何十年もかかると主張するのを耳にしてきた。彼らは、世界がより平和でより安全になるまで核兵器廃絶は見送るべきであると言う。核兵器をゼロ にするという目標は間違っている、そして、核兵器を持つ国と持たない国が存在しても、核兵器は実際に世界の安定と安全を強化するのだと論じる者さえいる。 核抑止力には効果があると一般市民を安心させようとしているのだ。核兵器保有国は核軍縮に関して新たに肯定的な発言をする一方で、国家安全保障を理由に、 これから数十年にわたり何千何百という核兵器を武器庫に保有し続ける計画である。これらの議論はいずれも精査に耐えうるものではない。
 核兵器廃絶はより平和でより安全な世界に向けての重要なステップである。核兵器保有を全ての国でなく限られた国のみに認めれば、核拡散と不安定さを促進 することとなる。それは北アジアや中東の状況を見ると明らかである。核抑止力(これは全市民を焼き尽くすという脅迫の婉曲表現である)に失敗はないと期待 することは幻想に過ぎない。
 核兵器廃絶は議論の余地がないほど正当な目標であり、素早く確固たる速度で進めていくことが必要だ。核兵器のない世界の実現を阻む唯一の障害は強硬な政 治姿勢である。秋葉忠利広島市長と4,000以上の都市の市長は2020年までに核兵器のない世界を実現するよう呼び掛けている。この課題を達成するのに 10年は十分すぎるほどの時間である。IPPNWは平和市長会議とともにこの提案の実現に努力していく。
 原子力エネルギー利用の世界的普及は、原子力産業および核燃料製造に既得の経済的利権を有する政府によって強力に推進されているが、核兵器廃絶にとって 深刻な障害となっている。原子力エネルギーは気候変動問題に対する有効な解決策ではなく、運転過程の全ての段階で健康と環境を危険にさらす。原子力発電所 が核拡散の危険性を内在しているだけでなく、原子炉そのものが攻撃対象となることも問題である。攻撃対象の数は増やすのではなく減らしていくべきである。 加えて、原子力エネルギーで世界のエネルギー需要を満たすのは極めて高額な手段である。IPPNWは、再生可能なエネルギー源の世界的促進、エネルギー安 全保障の強化、化石燃料や原子力に依存しない経済・社会発展の実現を目指す国際再生可能エネルギー機関(IRENA)を支持する。
 何事も実現までには多くの段階がある。我々は米ロ間で締結された新START(新戦略核兵器削減交渉)を控えめではあるが正しい方向への一歩として支持 する。包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効は数年前に実現しているべきであったが、直ちに完了させるべきもう一つの段階である。その他の建設的段階と して、全ての核兵器保有国の先制不使用宣言、米国の戦術核兵器の欧州からの撤去、核分裂性物質の製造禁止、核兵器運搬システムを高度警戒状態から外すこ と、そして、新型兵器やその製造・実験用インフラの近代化プログラムを中止することなどがある。医療を専門とする者も、放射性医薬品製造用の全ての原子炉 を核兵器級の高濃縮ウラン(HEU)使用から低濃縮ウラン(LEU)使用に転換することによって、医療関係でのHEUの商業取引を止める義務がある。これ ら全ての段階は直ちに実行できるはずであり、実行すべきものである。
 しかしこれらは包括的核兵器廃絶協定の交渉に代わるものでもなければ、不可欠の条件でもない。ある特定の兵器規制措置の遅れが、速やかに核兵器ゼロを達 成するという最も重要な目標を妨害することがあってはならない。ここにIPPNWが2007年に核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)を立ち上げた理由 がある。ICANの目的は大量殺戮兵器を世界から排除する核兵器禁止条約への市民および政府関係者の支持強化である。
 核戦争はこれまで考え出された中で最も極端な形の武器による暴力である。しかしそれだけではない。冷戦終結以降も、イラク、アフガニスタン、バルカン諸 国、旧ソ連共和国、中東、アフリカ、南アジアおよびラテンアメリカでは戦争や軍事介入により百万人単位で、主として非戦闘員が亡くなった。戦争、犯罪、自 殺、事故に関連した小火器の使用で、毎年、何十万人もの人が死亡し、何百万人もの人が負傷している。さらに、小火器や他の通常兵器の使用が、特に世界で最 も不安定な地域においては、容易に核兵器の使用にエスカレートしかねない。WHOは、暴力は、武器を用いた暴力も含めて、重要かつ予防可能な健康問題と特 定し、根底にある原因をよりよく理解し、効果的な介入を行っていくための公衆衛生面からの取り組みが必要であるとしている。これは今年10年目となる IPPNWの「予防を目指して(Aiming for Prevention)」運動の最終目標である。
 平和、安全保障、そして自由は全ての人々の権利である。これらの権利を世界中に普及させる最も効率的な手段は国連のミレニアム開発目標である。あらゆる 種類の武装暴力は人間の安全保障と発展を脅かすものである。この地球規模の問題の公衆衛生上の側面はほとんど理解されていない。意図的な暴力による傷害や 死亡の割合は高いが、それを低下させるため、我々はあらゆる社会階層において予防政策を支持する、行動重視での調査、教育そして唱導を行っていく必要があ る。IPPNWは健康と開発は切り離せないものであると認識しており、「武装暴力と開発に関するジュネーブ宣言」を早い時期から支持している。この宣言 は、2015年までの武装暴力による世界の負担の測定可能な低減、人間の安全保障における具体的成果を求めている。
 我々はIPPNW設立30周年およびノーベル平和賞受賞団体としての25周年を記念するため、バーゼルでの「第19回IPPNW世界大会」に参集した。 IPPNWは我々の最優先事項である世界から核兵器を排除すること、そして集団安全保障を提供する手段としては時代遅れで非効果的であり、人道に値しない 方法である戦争を防止することを今再びここに誓う。

(原文:英語、翻訳:広島県医師会事務局)

税と社会保障の一体改悪に反対★このまますすむと困っちゃう人々の会

7月18日の夕方、首相官邸前で「毎週水曜日 総理にお届けします ハートフルなスタンディングアクション」が行なわれました。長いネーミングですが副 題は「えっ!?このまますすんじゃっていいの?消費税増税?生活保護改悪?社会保障切り捨て?~総理!私たちの声を聞いてください!~」です。
 最初にスピーチをされたのは、反貧困ネットワークの代表で弁護士の宇都宮健児さん。タレントの家族が生活保護を受給していたことに端を発して、マスコミ などで生活保護に対するバッシングがされ、生活保護制度が改悪されようとしていることについて抗議の声をあげました。首都圏生活保護利用者有志の人たちが 「生活保護制度は私たちの生存(くらし)を守る大切な制度です」とこもごもお話しをされました。また、消費税増税法案と社会保障費の削減を志向し、憲法 25条の生存権を踏みにじる「社会保障制度改革推進法案」の審議が参議院で始まる中で、田村智子議員(日本共産党)が廃案にむけて奮闘する決意を話されま した。
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2012年7月17日火曜日

「さようなら原発10万人集会」に17万人集まる

7月16日、東京・代々木公園で開かれた「さようなら原発10万人集会」は、猛暑の中にもかかわらず、17万人もの人々が集まり、正午から歩行者 天国になった道路も埋めつくし、「原発再稼働反対」「原発ゼロ」の国民世論を大きくアピールしました。この集会の呼びかけ人は、内橋克人さん、大江健三郎 さん、落合恵子さん、鎌田慧さん、澤地久枝さん、瀬戸内寂聴さん、辻井喬さん、鶴見俊輔さんと先日幕張メッセで開かれたフェス「NO NUKES 2012」の発起人・出演者の坂本龍一さんです。
 私は、10時半頃会場に着き、第2ステージでリハーサル中の、アイドルグループ制服向上委員会の「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を聴いた後、原宿駅方面の第4案内カー前に行って、福島原発の被災者を支援する弁護士さんのお話などを聞きました。
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 12時に職場の仲間と待ち合わせの場所に行き、千代田線代々木公園駅方面から押しよせる人波を眺めていたら、「全労連新聞」号外が配られました。ここで は紹介しませんが、1面も2面もなかなかいい企画です。13時半から新宿中央公園までの2.7キロメートルのパレードを歩きました。いつもならそんなにバ テることはないのですが、とにかく猛暑が厳しくて、ペットボトルの水も出発前に飲みつくしてしまい、パレードの後半は声が出ませんでした。 (>_<)
 解散地点で、「しんぶん赤旗」号外が配られ、蟻が群がっているように人々が写っている上空のヘリコプターからの写真、横断幕や手作りの団扇を持って生き生きとした表情の女性や親子連れの写真などを楽しむことができました。DSC00191.jpg

2012年7月7日土曜日

教育の統制と公務員バッシングを考える

今週は、東京・石原都政下の学校における「国旗・国歌強制」及びトップダウンの教育改革の問題、橋下大阪市長による公務員バッシングと大阪「教育基本条例」「職員基本条例」の問題を考える2つの催しがありました。
 ひとつは、7月6日、東京「エデュカス東京」で開催された「橋下・『維新の会』のねらいを暴く交流集会」(主催:全労連・大阪労連・自治労連・全教)で、130人が参加しました。
講演は、小森陽一さん(東京大学大学院教授)の「『条例案』が示した橋下氏の人間観、政治観」、野田正彰さん(前関西学院大学教授)の「危険な政治家、 『ハシズム』の特徴と危険」、西谷敏さん(大阪市立大学名誉教授)の「橋下市政と公務員労働者」が行なわれ、橋下「維新の会」が、職務命令と厳罰によって 公務員の権利と教育の自由を奪い、競争主義で労働者を分断して、学校や自治体を社会的統制の道具にしようとしていることが浮き彫りになりました。続けて大 阪市労組、大教組、国公労連をはじめ公務員労働者の権利侵害とたたかう労働組合から、くらしと福祉・教育の切り捨てを許さない運動の発展と市民との共同の ひろがりについて報告がありました。
 私が印象に残ったことは、西谷さんのお話しのなかで、労働者の権利を侵害する条例は憲法違反だと追及しても、橋下氏はそれを何とも思っていないこと、市 民の一部にも「職務命令に従うのは当たり前だ」とその違法性を問題視していないことにふれ、憲法が保障する基本的人権は、長い歴史のなかで、(暴君の独裁 や資本家の横暴に対抗して市民・労働者が)勝ち取ってきた尊いものであり、その精神をしっかり身につけていく必要があるということです。
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 もうひとつは、7月4日、東京「弁護士会館」で開かれたシンポジウム「学校に心の自由はあるのか」(主催:東京弁護士会・日本弁護士連合会)です。
 シンポジウムのパネリスト渡部謙一さん(都留文科大学)は、都教委が都立高校の入学式・卒業式に「国旗掲揚・国歌斉唱」の細部にわたり校長に職務命令を 出させて、それに従わないものを処分するといった強権的な教育行政の実態とそれによってもたらされた教育現場の苦難について、太田健義さん(弁護士)は、 大阪・門真三中「君が代」不起立処分取消訴訟の裁判の経過と東京の裁判における最高裁判決の問題点について、尾木直樹さん(教育評論家)は、教職員や公務 員へのバッシングが強まるなかで市民とつながることの必要性と子ども・青年の人権感覚を育てる教育実践の課題について話されました。
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2012年7月1日日曜日

最高裁は「表現の自由」を守れるか

表題は、6月30日に東京・「星稜会館」で開催された「6・30国公法弾圧事件シンポジウム」のタイトルです。このシンポジウムには、370人が集まりました。
 国公法弾圧事件とは、国家公務員が休日に職務と関係ない地域で日本共産党のビラを配布したことが、政治活動を禁止している国家公務員法違反であるとして逮捕、起訴された二つの事件のことです。
 講演は、ジャーナリストの青木理(おさむ)さんが「公安警察の言論弾圧の実態」、続いて憲法学者の青井未帆さんが「国公法事件が『憲法』に問いかけるもの」を話され、その後、弁護士の加藤健次さんを加えてパネルディスカッションがおこなわれました。
 青木理さんは、公安警察が、共産党員を陥れるためにさまざまな違法捜査を隠れて行なっていること、刑事ドラマにも出てくる「裏の管理官」がその指揮を執っていることなどを赤裸々に話しました。
 青井未帆さんは、最高裁の判例になっている「猿払判決」の問題点に触れながら、基本的人権である「表現の自由」は国家公務員であっても尊重されなくては いけないこと、ビラ配布は社会一般にとって大切な表現手段であり、その自由は保障されなくてはいけないことを話されました。
 シンポジウムの最後に、裁判をたたかっている堀越さんと宇治橋さんが、無罪判決、違憲判決を勝ち取るためにたたかう決意を表明されました。
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2012年6月30日土曜日

首相官邸前デモ最大規模20万人!「原発再稼働反対」

先週、4万5千人が集まった「原発再稼働反対」のデモは、6月29日、さらに拡大して20万人が集まりました。
主催者も人数把握がなかなかできなかったようですが、ヘリから撮影された映像など総合的に判断した数字だと思います。開始の午後6時にはすでに歩道に長蛇の列ができて、7時前には車道にあふれ、7時半頃には車道も埋め尽くしてしまいました。
 この様子は、テレビ朝日の報道ステーション、TBSのNEWS23クロスで詳細に報道されました。
 ツイッターで「許せない」と声が上がったのが、官邸で野田首相が「大きな音だね」とSPに言ったことです。原発事故で大きな犠牲を払った福島の人たちの 苦しみと怒り、大飯原発再稼働により命の危険にさらされようとしている福井と京都など近隣の府県の住民の不安に対して、政府の長がまったく人間の心を知ら ないコメントです。
 大飯原発だけでなく、全国にある原発が再稼働にむけて準備を始めつつあります。原発ゼロの日本をめざして、市民のデモは終わらないことでしょう。
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【追記】
私は、平和について考える若い人たちの励ましになればと考えて、ブログやツイッターを始めました。
でも今は、若い人たちの行動力やまっすぐな気持ちに、私の方が励まされています。
「未来を変えよう」
「子どもを守れ」

2012年6月24日日曜日

いのちと暮らしを守れ! 怒りの6・23国民大集会

今日、東京・明治公園で、「いのちと暮らしを守れ! 怒りの6・23国民大集会」が開かれ、2万4000人が参加しました。野田政権は、税と社会保障の 「一体改革(改悪)」を週明けにも強行しようとしています。与党民主党と、自民党、公明党の三党が談合して、世論に背を向けて、消費税増税をしようとして いるのです。年金制度の維持や、社会保障にお金がかかるのは事実です。しかし、ヨーロッパの国々では、企業が社会保障の費の負担を多くしています。企業は 経済活動によって利益を得ています。その利益は消費者がもたらしてくれるものですから、それを社会に還元する。こうしたことが当然のことと考えられていま す。日本では、かつての自民党政権も、いまの民主党政権も、財界には頭が上がらず、財界いいなりの政治を国民に押しつけています。原発の再稼働も、多くの 国民が反対の声を上げているのに、財界の意向をくんで強行しようとしています。昨日の首相官邸前の4万5000人デモと今日の2万4000人国民大集会に 集まった人々のパワーでこの政治を大きく転換させていきたいものです。
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アピール

 本日、私たちは東京・明治公園で、全国から2万4000人の参加で「いのちと暮らしを守れ! 怒りの6・23国民大集会」を開催しました。
 政権交代に託した期待や願いを裏切って、野田民主党政権は、社会保障・税の「一体改革」にむけて、消費税増税で国民への負担を強め、大企業には減税し、子ども・子育て新システム、年金切り下げ、医療費負担増などによる社会保障制度の大改悪ねらっています。
 民主・自民・公明3党の「修正協議」によって、今まさに消費税増税法案の成立強行がねらわれる重大局面をむかえています。消費税10%への増税と社会保 障改悪による国民負担増は20兆円にもなり、「これでは暮らしていけない」と怒りが急速にひろがっています。各種の世論調査でも、消費税引き上げ反対の声 は国民の過半数を超えています。こうした状況は、私たちの運動が作り出していることにあらためて確信を持ち、増税法案の廃案にむけて総力を挙げてたたかい ぬきましょう。

 東日本大震災から1年3か月が経つのに、被災地の生活と生業(なりわい)の再建はいまだにすすんでいません。そのうえ、福島原発事故では全面賠償に背をむけ、各地の除染対策などもすすんでいません。
 こうしたなかにあって、野田内閣は大飯原発の再稼働を決定しました。原発からの撤退を求める国民世論に真っ向から挑戦する暴挙であり、断じて認められません。全国から緊急に怒りの声を集中させ、再稼働を阻止しましょう。

 自公政権の「構造改革」で痛みつけられた労働者・国民の状態は、民主党政権のもとでさらに悪くなるばかりです。年収200万円以下の労働者が5年連続で 1千万人を超えています。孤立死や餓死が社会問題になるなか、野田内閣は最後のセーフティネットの生活保護の改悪や、労働者使い捨ての有期労働契約法制を ねらっています。
 消費税大増税、社会保障大改悪反対、TPP参加反対では全国的な共同が大きくひろがっています。原発ゼロをめざして各地で草の根からの運動が前進しています。先の沖縄県議選では、普天間基地の県内移設反対の意思が明確に示されました。
 今こそ、怒りを運動の力に変え、たたかいをいっそう強め、悪政阻止にむけて全力をあげましょう。憲法を守り生かし、要求を高く掲げ、国民の暮らし・いのちを守るために奮闘しましょう。

 2012年6月23日   いのちと暮らしを守れ! 怒りの6・23国民大集会

2012年6月23日土曜日

6.22緊急!大飯原発再稼動決定を撤回せよ!首相官邸前抗議

毎週金曜日の夜、首都圏反原発連合有志が呼びかけて行なわれている、反原発の首相官邸前抗議デモは、毎週規模を拡大し、今日は、およそ4万5千人が集ま り、「再稼働反対」「原発反対」「子どもを守れ」のシュプレヒコールをあげ続けました。この様子は、報道ステーション(テレビ朝日)でくわしく報じられま した。
デモにかけつけた作家の落合恵子さんは「再稼働をここで反対しておかないと、なし崩しになってしまう怖さがありますから、今ここでふんばらなかったら…。 本当に国民の生活の安定というけれど、命はどうするんだという問いかけは本当に今、切実だと思います」と取材にこたえました。また、報道ステーションで は、「再稼働反対」の市民の声が首相官邸の中にも響き渡っていることを報じました。
先週、1万1千人が集まったのに、大手マスコミはこれを無視しました。ツイッターなどで情報がひろがり、初めて行動に参加する人たちが多くみられました。お子さん連れの、ママ・パパの姿もありました。
来週はさらに多くの人たちが集まり、「再稼働反対」「原発反対」の声を上げるに違いありません。
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2012年6月19日火曜日

STOP TPP !! 市民アクション 有楽町で街頭宣伝

「STOP TPP !! 市民アクション」 は、6月18日、午後6時から有楽町「イトシア」前で、「TPP参加表明にSTOPを!! STOP TPP !! 市民と国会議員の街頭リレートーク」を行ないました。
「STOP TPP!!市民アクション」は、「排外主義でないTPP反対」を一致点とする市民団体・消費者団体、労働組合、NGO・NPOのネットワークです。4月 25日に「STOP TPP !! 1万人キャンドル集会」を共催し、今月は「STOP TPP !! 6月緊急アクション」を実施しています。その一環として、G20の場で政府がTPPへの参加表明をすることを阻止するため、街頭宣伝行動にとりくみまし た。
国会議員では、参議院議員の 紙 智子さん(日本共産党)が日本の農業を破壊するTPP参加を阻止するために奮闘する決意を語りました。また、消費者団体、労働組合、農民団体、医療機関な どの代表と新潟で農業を営む男性が、国民のくらしと食の安全を脅かすTPP参加を、断固阻止していこうと訴えました。
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2012年6月17日日曜日

大飯原発再稼働決定に全国で抗議行動

野田内閣は、6月16日、関西電力大飯原発再稼働を決定しました。
福島第一原発事故は、政府が想定しない過酷事故を起こして、深刻な放射能汚染により住宅、職場、農地、漁場が失われました。どんなに安全対策を施しても、 重大な事故が起これば核分裂反応を制御することができないということが1年3カ月前に明らかになったにもかかわらず、財界の利益を優先して、再稼働を決定 したことは許しがたいことだと思います。
日本の豊かな自然を利用して、水力、風力、地熱、太陽光の発電を適材適所開発して、送電距離を短くして送電途中での電力のロスを減らせば、必要な電力は確保できるはずです。
15日(金)の夕方から夜にかけて、首相官邸前に再稼働に反対する約1万人の市民が集まり抗議と怒りの声を上げました。DSC00001.jpgこの様子は、インターネットのUSTREAMで実況中継され、全国で多くの人が「再稼働反対」の声を上げました。
16日(土)は午前9時から市民が集まり再稼働決定に抗議しました。
大飯原発のある福井県に隣接する京都でも、16日夕方雨の降るなかで150人が集まり、抗議のデモ行進を行ないました。
【関連記事】http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-16/2012061601_01_1.html

2012年5月29日火曜日

小選挙区制を廃止し、比例代表制的な選挙制度に

5月23日、衆議院の政治倫理の確立・公職選挙法改正特別委員会で衆院の選挙制度について参考人質疑が行なわれました。そのなかで五十嵐仁氏(法政大学大 原社会問題研究所)は、小選挙区制の害悪について詳しく話され、比例定数を削減する案を「民意を切る改悪」だと批判しました。民主的な選挙制度がない限 り、議会制民主主義は絵に描いた餅です。国民の命と暮らしを守る政治を実現するには、小選挙区制を廃止し、比例代表制を主体とする選挙制度に変えていく必 要があると思います。(MITURU)
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 衆院政治倫理の確立・公職選挙法改正特別委員会(23日)で法政大学大原社会問題研究所の五十嵐仁教授が行った意見陳述を紹介します。

 1993年に本を書いて小選挙区制を批判し、連用制の問題点も指摘しました。小選挙区制に問題があることはこのときから明りょうでした。過ちを改めるには今が絶好のチャンスだと思います。
 小選挙区制は最悪の選挙制度であり、ぜひ廃止してもらいたい。
 小選挙区の制度的欠陥は第一に、多数と少数が逆転するからくりが仕組まれていることです。イギリスでは1951年と1974年の2度、総得票数と議席数が逆転しています。民主主義を口にするなら認めてはなりません。
 第二は、少数(の得票)が多数(の議席)に読み替えられるという問題です。2009年総選挙で、民主党は47%の得票率で74%の議席を得ています。
 第三に、多くの死票が出て選挙結果に生かされません。09年総選挙では、46%が死票になっています。
 第四に、「過剰勝利」と「過剰敗北」によって選挙の結果が激変します。
 第五に、政党規模に対して中立ではなく、小政党に不利になります。このように、小選挙区制は人為的に民意をゆがめる根本的な欠陥をもっています。
 実際にどのような問題が生じてきたか。
 政権の選択肢が事実上二つしか存在しません。小選挙区で当選するための「選挙互助会」的な政党ができました。「風向き」によって短期間で多数政党が交代 します。二大政党の間の有権者を奪い合うために相互の政策が似通ってくる。地域や民意とも離れ、議員の質も低下しています。
 制度改革についての議論では、連用制が提案されています。しかも、頑張ってほしいと有権者が小選挙区で票を投ずるほど、比例代表では減ってしまいます。民意がゆがめられ「正当に選挙された国会における代表者」という憲法前文に反する可能性があります。
 比例定数の削減案も出ていますが、日本の国会議員は国際的に見ても多くない。現在より少なくするのは反対です。身を切る改革と言われていますが実際は民意を切る改悪です。比例定数の削減は小選挙区の比率を高め、問題点や害悪を増大させるだけでしょう。
 小選挙区の「0増5減」案は当面の緊急避難であり、人口移動が続けばいずれまた是正が必要になります。抜本的改革を先延ばしする口実であってはなりません。
 民意の反映か集約かという論争も以前からありました。選挙は民意を議会に反映するためのもので、その民意を討論によって一つの方向に集約していくのが国会の役割です。議会で民意を集約するべき議員自身が選挙での集約などと言うのは自己否定にほかなりません。
 今日、「政治改革神話」が崩れ、見直しの議論がされているのは歓迎すべきことです。小選挙区制を廃止して比例代表制的な選挙制度に変えることで、より民主的で本当に国民の願いが国会に反映されるような選挙制度に改革していただきたいと思います。
(2012年5月26日「しんぶん赤旗」記事より)

2012年5月9日水曜日

高速ツアーバス重大事故に関して、自交総連が「見解と要求」を発表

関越道の高速ツアーバス重大事故に関して、自交総連が5月8日、「見解と要求」を発表しました。自交総連は、タクシー・ハイヤー、自動車教習所、観光バス労働者を組織する労働組合です。
 「見解と要求」では、「貸切バス事業は2000年に規制緩和されて以降、99年度から09年度にかけて、事業者数は2336が4392に88%も増える 一方、営業収入は5434億円が4474億円に減少している。大量の新規参入による過当競争、安売り競争が激化し、運転者には長時間で過酷な勤務と低賃金 が押し付けられ、バス運転者(乗合含む)の年間賃金は538万円から386万円に28%も低下している。」「規制緩和以降、旅行業者が貸切バスを活用して 高速道路を経由する2地点間の移動を目的とする募集企画旅行を販売する「高速ツアーバス」といわれる形態が急速に拡大した。高速ツアーバスは、道路運送法 にもとづく乗合バスの規制が適用されず、安全性など様々な問題が指摘されていたものであり、今回、事故を起こしたのも、この高速ツアーバスである。」「自 交総連は、規制緩和が強行される以前からその危険性を指摘し、過当競争が運転者の労働条件を低下させ、いずれ重大な事故がおきかねないことを再三にわたり 指摘してきた。にもかかわらず、あずみ野観光バス事故に続き、再び多くの人命が奪われる重大な事故が起きたことは誠に残念であり、対策が後手となり、的確 な対応となっていなかったという点で国土交通省はじめ行政当局、政府の責任はまぬがれない」と告発し、運転労働者の労働条件を改善し、安全運転で生活でき る賃金・労働時間を保障すること、政府が交通運輸事業の規制緩和策を検証し、必要な規制の強化をはかることを求めています。
 私のブログの中央メーデーの記事のなかで「競争至上主義で、労働者の賃下げと長時間・過密労働が横行するなかで、さまざまな弊害と生命の危険が生じてい ます。労働者の生活と権利を守ることは、国民の命と暮らしを守ることと直結する問題になっています」と書きましたが、改めてこのことを述べて警鐘を鳴らし たいと思います。
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関越道の高速ツアーバス重大事故に関する見解と要求
2012年5月8日 自交総連

1.4月29日午前4時40分ごろ、群馬県内の関越自動車道において、金沢発東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)行の夜行高速ツアーバスが道路左の防 音壁に激突し、乗客7人が死亡、乗員含め39人が重軽傷を負うという重大事故が発生した。バスを運転していた43歳の運転者は5月1日に危険運転過失致死 傷容疑で逮捕されたが、疲れていて居眠りをしていたと供述しているという。行程の545kmを交替運転者なしの1人で運転していた。
 バスのツアーを企画したのは大阪に本社がある「ハーヴェストホールディングス」という旅行会社、バスを運行していたのは千葉県の「陸援隊」という貸切バス事業者である。
2.すでに多くの報道等でも指摘されているように、この事故の背景には、規制緩和による貸切バス事業の過当競争激化、運転者の労働条件の悪化がある。
 貸切バス事業は2000年に規制緩和されて以降、99年度から09年度にかけて、事業者数は2336が4392に88%も増える一方、営業収入は 5434億円が4474億円に減少している。大量の新規参入による過当競争、安売り競争が激化し、運転者には長時間で過酷な勤務と低賃金が押し付けられ、 バス運転者(乗合含む)の年間賃金は538万円から386万円に28%も低下している。
 さらに規制緩和以降、旅行業者が貸切バスを活用して高速道路を経由する2地点間の移動を目的とする募集企画旅行を販売する「高速ツアーバス」といわれる 形態が急速に拡大した。高速ツアーバスは、道路運送法にもとづく乗合バスの規制が適用されず、安全性など様々な問題が指摘されていたものであり、今回、事 故を起こしたのも、この高速ツアーバスである。
 一般の貸切バスも含め、旅行を企画する旅行会社と運行を請け負う貸切バス事業者との関係では、過当競争状態にある貸切バス事業者の立場が圧倒的に弱く、 公示運賃を大幅に下回る低運賃や無理な運行計画が旅行業者から押し付けられる事例が蔓延、道路運送法違反の日雇い・アルバイト運転者の雇用なども増える傾 向が顕著になっていた。
 今回事故を起こした陸援隊という会社は、こうした貸切バス事業の問題点をことごとく体現しているような問題事業者であることが、その後の調べで明らかに なってきた。運転者は違法な日雇いで、自分の所有するバスで中国人向けバスツアーを違法な名義借りで個人営業、今回の金沢での休息期間中にも自分の所有す るバスの修理手配などをしていたと報道されている。まともな運行管理や点呼もしないという非常識な無管理状態で営業し、多数の道路運送法違反があったこと も明らかになっている。今回の運行は、旅行会社から別の2社を介在して受注したもので、東京-金沢往復を公示運賃の下限35万6500円(545km×2 日で試算)の半額以下の15万円で受注していたといわれている。同社は、もともと「インバウンド」といわれる外国人旅行客のツアーに特化していた会社で、 東日本大震災により外国人旅行客が激減する環境のなかで、生き残りのために安値をいとわない状態にあったと思われる。
3.こうした貸切バス事業をめぐる問題点は、07年2月に大阪で起きたあずみ野観光バスの過労運転・死傷事故をきっかけに社会問題となり、国土交通省が 08年9月に1日の乗務距離670km以上は交替運転者を配置することとした指針を定めたのをはじめ、10年9月には総務省行政評価局が貸切バスの安全確 保対策に関する行政評価・監視に基づき国土交通省等に勧告を行い、国土交通省では「バス事業のあり方検討会」を10年12月から開催、今年3月に報告をま とめたところであった。
4.自交総連は、規制緩和が強行される以前からその危険性を指摘し、過当競争が運転者の労働条件を低下させ、いずれ重大な事故がおきかねないことを再三に わたり指摘してきた。にもかかわらず、あずみ野観光バス事故に続き、再び多くの人命が奪われる重大な事故が起きたことは誠に残念であり、対策が後手とな り、的確な対応となっていなかったという点で国土交通省はじめ行政当局、政府の責任はまぬがれない。
 交替運転者の配置指針が1日670kmとされたことについて、自交総連は、その制定当初から、運転者の疲労の実態に合わず、500km以下とするように 国土交通省に要請してきた。また、この配置指針の距離が1日の運転時間の上限を9時間とした運輸規則の規定から算出されたものであり、さらにそのもとと なったのが厚生労働省告示の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の規定であることから、厚生労働省に対しても同告示の改正を申し入れてきた。
 総務省の行政評価の調査には積極的に協力して問題点の摘出に貢献した。その結果、的確な勧告がなされたにもかかわらず、それを受けた国土交通省の「バス 事業のあり方検討会」での論議は、勧告で指摘された点に真剣に応えないものとなっていることが中間報告の段階で明らかになったため、昨年10月には国土交 通省と同検討会に対して適切な最終報告とするよう申入れを行った。旅行会社の要求を断れず運賃ダンピングが常態化していることやインバウンドの問題点、ア ルバイト雇用の実態なども指摘して、改善を申し入れた。しかし、この要請の趣旨は生かされず、不十分な最終報告が今年3月に出された矢先に、今回の重大事 故が発生したのである。
 バス事業のあり方検討会報告の問題点は別添のとおりであるが、高速乗合バスと高速ツアーバスを一体化して新たな高速乗合バス規制に移行するというもの の、具体策は未定が多く、乗合バスに関しては従来より規制が緩和されるものである。さらに、貸切バス事業者に無理な運行と低運賃を押し付けている旅行業者 への指導・監督の強化は骨抜きとされ、運賃適正化は先送りされている。
5.交通機関にあって安全を担保するのは、直接、運転に携わっている運転労働者である。この労働者の労働条件を改善して、安全運転で生活できる賃金・労働時間を保障しない限り、真の安全は確保できない。
 政府は、この間の交通運輸事業の規制緩和政策を真しに検証し、必要な規制の強化をはかるべきである。
 国土交通省・観光庁・厚生労働省に対して、早急に以下の点の改善を求めるものである。

(1) 届出運賃(公示運賃)違反の是正措置を講じること。
また、法違反の日雇い・アルバイト運転者を一掃するため、監督・指導の強化をはかること。

(2) 低運賃や無理な運行(旅行行程自体が改善基準の拘束時間をオーバーしているもの等)を押し付ける旅行業者への監督・指導を強化し、罰則規定を創設すること。

(3) 高速ツアーバスの監査を強化し、高速乗合バス規制の緩和は行わないこと。

(4) 交替運転者の配置基準は1日500km以下とすること。

(5) 深夜運行は、運転者2人制(ツーマン化)とすること。

(6) 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を法制化すること。
当面して、①拘束時間1日13時間以内、②休息期間11時間以上、③運転時間1日7時間以内、④連続運転時間2時間以内とするなどの改善を早急に行うこと。

                      以 上

2012年5月7日月曜日

2012年国民平和大行進スタート

5月6日、東京・夢の島公園の第五福竜丸展示館前で、2012年国民平和大行進出発集会が開かれ、900人が参加しました。国民平和大行進は、全国で 11の幹線コース〔北海道→東京(4コース)、東京→広島、富山→広島、和歌山→広島、四国→広島、長崎→広島、宮崎→広島、沖縄→広島〕と、幹線コース に入らない自治体を回る網の目行進がおこなわれます。共通スローガンは、
 ◇核兵器の全面禁止を求めてともに歩こう!
 ◇秋の国連総会へ核兵器禁止の声をとどけよう!
 ◇非核三原則を守ろう!核も基地もない非核平和の日本を実現しよう!
 ◇放射線被害の根絶、原発ゼロ、自然エネルギーへの転換を!
 ◇ノーモア・ヒロシマ!ノーモア・ナガサキ!ノーモア・ヒバクシャ!
   広島・長崎の被爆者、世界の核被害者と連帯しよう!
 ◇原水爆禁止2012年世界大会を成功させよう!
 開会集会では、被爆者の方、宗教者、日本青年団協議会の代表、東京地評(労働組合)代表、青年Ring! Link! ZERO の代表からのお話しと、電話の音声で岡山「Peace Piece Okayama(PPO)」の代表からのお話が聞けました。13時に夢の島公園を出発した行進の参加者は1000人を超えて、途中、通り雨にあいながら、 17時30分に終着点である港区芝公園「平和の灯」前に到着しました。7日は、この場所を9時に出発して川崎市役所まで行進がおこなわれます。
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2012年5月5日土曜日

地球の上に生きる2012 DAYS JAPAN 写真展

今日、新宿のコニカミノルタプラザで開催中のDAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展を観に行きました。
 コニカミノルタプラザが入っている新宿高野ビルは、フルーツの高野がメインのビルで、5階がタカノフルーツパーラー新宿本店になっています。写真展をおこなっているギャラリーは、このビルの4階です。
 写真展は、3部構成になっていて、ギャラリーCで「第8回DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」の受賞作品約60点が展示され、ギャラリーBで「アニ マルワールド」と題して野生の動物たちの迫真の写真、同じギャラリーBの奥で、広河隆一氏の「新・人間の戦場」から15作品が展示されています。
 「国際フォトジャーナリズム大賞」の作品は、DAYS JAPAN 5月号に掲載されたものですが、展示されていた大きな写真はたいへん迫力があって、写真を撮られた場所の空気が伝わってくるように思いました。
 広河氏の「新・人間の戦場」は、初めて見る写真でした。戦場には軍人と住民がおりなす非日常的な場面があり、それが長期に続いて日常になってしまっているパレスチナの現実がありました。私がその場でメモした全作品です。
 1)2002年・パレスチナ西岸地区(アラム検問所)、2)1982年・レバノン(イスラエル戦車の砲撃)、3)1982年・ベイルート・レバノン(肉 親を殺されたパレスチナ人女性たち)、4)1984年・ベイルート沖・レバノン(レバノン左派による自爆攻撃で200人以上殺され撤退する米海兵隊)、 5)2002年・パレスチナ西岸地区(トゥルカレム難民キャンプの男たち)、6)2002年・パレスチナ西岸地区(カランディア検問所で通行拒否されるパ レスチナ人女性)、7)パレスチナ西岸地区(パレスチナ武装勢力メンバーが狙撃されて死んだ)、8)2002年・エルサレム・イスラエル(パレスチナ人に よる自爆攻撃後、恐怖が覚めないユダヤ人の親子)、9)2002年・パレスチナ西岸地区(パレスチナ難民キャンプを捜索するイスラエル兵)、 10)2002年・パレスチナ西岸地区(イスラエル軍の捜索を遠くから見るパレスチナ人親子)、11)2002年・パレスチナ西岸地区(外出禁止令が敷か たベツレヘムで様子を見に家から出てきた親子)、12)2002年・パレスチナ西岸地区(ジェニン難民キャンプのオマル氏)、13)2011年・福島第一 原発(水素爆発を起こした4号機・3号機)、14)2012年・福島第一原発(使用済核燃料が危険な状態にある4号機・上空から撮影)、15)2012 年・福島第一原発(4号機・3号機・2号機・上空から撮影) 以上です。いずれも、緊張感にあふれ、目を釘付けにされる作品でした。20120505.jpg
 写真展「地球の上に生きる2012」は、新宿・コニカミノルタプラザで、5月21日まで開催されています。是非一度足を運んでみて下さい。

2012年5月3日木曜日

5・3 憲法記念日の集い

憲法記念日の5月3日、「千葉市文化センター」で憲法記念日の集いが開かれ、400人が参加しました。
 主催は、千葉県憲法会議、憲法改悪反対千葉県共同センターです。
 開会あいさつで高橋勲弁護士は、東日本大震災と福島第一原発事故後の政治のなかで憲法とかけ離れた現実が顕わになっていることを指摘し、憲法改憲を阻止し、憲法を活かす=「活憲」の運動をすすめようと呼びかけました。
 続いて、千葉合唱団のみなさんによる合唱で、「陽のあたる道」「花祭り」「アリラン」「あきらめないで(長崎平和宣言より)」の4曲が演奏されました。
 記念講演は、三宅明正さん(千葉大学教授)が、「世界の動きの中で読む日本国憲法 くらし・人権・民主主義」と題しておこないました。最近の動きで、4 月25日、福島県双葉町長の井戸川克隆さんが、参議院憲法審査会のなかで、憲法第13条の幸福追求権、第25条の生存権が双葉町の住民に対してはまったく 守られていないと発言したこと、4月27日、自民党が新たに日本国憲法改正草案を発表したことに触れました。そして国の為政者が人々のくらしや生命を守る ことに情熱を持っているとは思えないと述べました。次に、世界の変動の中で、歴史教科書批判がフランス、イギリス、ドイツなどでも起きるなど不安定化とナ ショナリズムへの回帰が見られること、その一方で人権については、グローバル化のプラス面があらわれていることを紹介しました。こうした問題をさまざまに 重ね合わせながら議論と対話をしていく必要があること、政治的な共同体を作り直す課題と正統性(日本国憲法とその理念)、日本が世界に遅れている教育条件 の問題などを考えていく必要があることなどを話されました。
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第83回中央メーデー ~国民生活の危機打開を!

5月1日、代々木公園で「働くものの団結で生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう」をスローガンに第83回中央メーデー式典が開かれ、2万1000人が参加しました。
 野田政権が、多くの国民の反対を押し切って、消費税増税を強行しようとするなかで、今年のメーデーは、労働者、自営業者、農民の連帯をいっそう強くするものになりました。
 4月29日の早朝に関越自動車道で起きたバス激突の大惨事は、2000年、自公政権と民主党の賛成で、道路運送法が改悪され、規制緩和によって過当競争が煽られたことが背景にあります。
 競争至上主義で、労働者の賃下げと長時間・過密労働が横行するなかで、さまざまな弊害と生命の危険が生じています。労働者の生活と権利を守ることは、国民の命と暮らしを守ることと直結する問題になっています。
 また、TPP交渉参加で日本の農業が大打撃を受ければ、食糧自給率が下がり、食の安全が脅かされることになります。それは国民生活と国のあり方にかかわる大問題です。関税によって自国の農業を守ることは主権国家として当然のことです。
 野田政権の国民犠牲の政治、大企業とアメリカの利益優先の政治を止めるために、今年のメーデーが跳躍台になることを期待しています。
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 第83回中央メーデー宣言

 私たちは本日、労働者・国民の団結と連帯の力で第83回中央メーデーを成功させました。
 国民生活の危機、日本の危機が進行し、歴史的な転換の時期にある今こそ、メーデーの原点に立ち返り、すべての働く者が連帯と共同の力を発揮したたたかいで、くらしと雇用・仕事が安定した憲法がいきる社会をめざすことを確認しました。
 消費税増税、TPP参加を推し進めようとする野田政権の悪政との当面のたたかいや、3.11東日本大震災からの早期復興と原発ゼロにむけたとりくみに力を寄せあい、要求実現をめざす決意を固めあいました。

◇すべての労働者・国民のみなさん
 「3・11」から1年余が経過しましたが、被災地の傷跡は余りに大きく、くらしも生業も復旧にはほど遠い状況です。仮設住宅での相次ぐ孤独死、ゼネコン 主導の復興による賃金ピンハネの横行、職を求め、ハローワークに列をなす労働者-いま被災地では生活の再建とそれを支える雇用の確保が喫緊の課題です。
 原発事故が未だに収束しない福島では、16万人もの方々が故郷を追われ、多くの方々が健康と将来に不安をかかえながらの生活を強いられています。政府の対応は、災害に比して不十分で政治災害の状況です。
 こうしたもとで野田政権は、消費税率を10%に引き上げる大増税の法案を提出し、国内産業に壊滅的な打撃を与えるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定) への参加表明を行おうとしています。福島原発事故の原因が未解明な段階で、「大飯原発再稼働」を押し進めようとしています。被災者と被災地城にさらなる負 担を押し付け、その心情を顧みない悪政に、激しい怒りが沸き起っています。
 私たちは、その怒りに共鳴し、一部の大金持ちや輸出大企業の求める政治から「99%」の国民が望む政治への転換を求めます。生活危機突破の要求を高く掲げてたたかいを広げ、野田政権を追い詰めましょう。

◇すべての労働者・国民のみなさん
 2000年代を通じ、労働者の賃金は減少し続けてきました。不安定で劣悪な労働条件を強制される非正規労働者も増加し続けました。労働者の状態悪化が国 内消費を縮小させ、日本は成長しない国になりました。一部の大金持ちと大企業に富が集中し、格差と貧困が拡大し続けています。大企業が元気になっても、労 働者の雇用は安定せず、所得も増えず、地域経済も活性化しませんでした。国や地方自治体の財政も悪化の一途です。
 いま必要なのは、デフレ・スパイラル=負の連鎖を止め、内需中心の経済に転換させることです。賃上げと雇用の安定、適正な下請け単価の支払いのための規 制を強めます。被災者本位の震災復興に全力を挙げ、年金、医療などの社会保障を充実するなど、労働者・国民の懐をあたためる施策を大胆に進めることです。 巨額な内部留保をため込む大企業などに応分の負担を求め、軍事費などの無駄を削減して内需拡大の財源を確保することです。
 今の生活を守り、明日の日本社会に希望をつなぐたたかいに立ち上がりましょう。
 大阪・維新の会による憲法違反・競争主義強化の二条例制定や組合攻撃など、憲法をないがしろにする逆流とのたたかいを強めましょう。

◇すべての労働者・国民のみなさん
 日本でも世界でも、変化がおきています。6割の国民が「脱原発」を切望し、さる3月11日には全国で10数万人以上が「震災復興と原発ゼロ」を求めて行 動に立ち上がりました。消費税増税や「TPP参加」反対のたたかいでは、要求の一致点での国民的共同が全国で広がっています。アメリカでは「ウォール街占 拠」運動が世論を動かし、ヨーロッパでは投機のつけ回しによる財政緊縮策に反対するたたかいが国境をこえて広がっています。
 震災に便乗した期間社員の雇止めを撤回させる一方で、解雇・雇止めを容認する不当判決が出されるなど、労働者の権利と雇用をめぐる状況も複雑です。しか し、働く者すべてが力をあわせ、明日への希望を持ってたたかいつづければ、攻撃は必ず跳ね返すことができます。それは、世界の動きとメーデーの歴史からも 明らかです。
 今日を機に、「99%」の力の総結集で「雇用と仕事の確保、賃上げ、社会保障拡充で、内需中心の経済、震災復興、原発ゼロ」のたたかいを飛躍的に前進させましょう。
 働く者の団結万歳! 世界の労働者万歳! 第83回中央メーデー万歳!

2012年5月1日
     第83回中央メーデー集会

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2012年4月30日月曜日

沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい(2)

「沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい(1)」のつづきです。
 伊波洋一さんの講演に続いて、弁護士で日本平和委員会代表理事である内藤功さんが、「基地撤去・安保廃棄と砂川違憲判決の意義」を特別報告されました。
 砂川事件は、1957年7月、当時の砂川町にあった米軍立川基地拡張に反対するデモ隊の一部が基地に立ち入り、同年9月に23人が日米安保条約に基づく 刑事特別法違反容疑で逮捕され、うち7人が起訴されたものです。1959年3月30日、東京地裁は米軍駐留は違憲として7人に無罪を言い渡しました。伊達 秋雄裁判長の名前から伊達判決と呼ばれます。
 伊達判決は次のように述べています。「わが国に駐留する合衆国軍隊はただ単にわが国に加えられる武力攻撃に対する防禦(ぼうぎょ)若しくは内乱等の鎮圧 の援助にのみ使用されるものではなく、合衆国が極東における国際の平和と安全の維持のために事態が武力攻撃に発展する場合であるとして、戦略上必要と判断 した際にも当然日本区域外にその軍隊を出動し得るのであつて、その際にはわが国が提供した国内の施設、区域は勿論この合衆国軍隊の軍事行動のために使用さ れるわけであり、わが国が自国と直接関係のない武力紛争の渦中に巻き込まれ、戦争の惨禍がわが国に及ぶ虞(おそれ)は必ずしも絶無ではなく、従つて日米安 全保障条約によつてかかる危険をもたらす可能性を包蔵する合衆国軍隊の駐留を許容したわが国政府の行為は、『政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起きない ようにすることを決意』した日本国憲法の精神に悖(もと)るのではないかとする疑念も生ずるのである。」「わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用 する目的で合衆国軍隊の駐留を許容していることは、指揮権の有無、合衆国軍隊の出動義務の有無に拘らず、日本国憲法第9条第2項前段によつて禁止されてい る陸海空軍その他の戦力の保持に該当するものといわざるを得ず、結局わが国内に駐留する合衆国軍隊は憲法上その存在を許すべからざるものといわざるを得な いのである。」「安全保障条約及び行政協定の存続する限り、わが国が合衆国に対しその軍隊を駐留させ、これに必要なる基地を提供しまたその施設等の平穏を 保護しなければならない国際法上の義務を負担することは当然であるとしても、前記のように合衆国軍隊の駐留が憲法第9条第2項前段に違反し許すべからざる ものである以上、合衆国軍隊の施設又は区域内の平穏に関する法益が一般国民の同種法益と同様の刑事上、民事上の保護を受けることは格別、特に後者以上の厚 い保護を受ける合理的な理由は何等存在しないところであるから、国民に対して軽犯罪法の規定よりも特に重い刑罰をもつて臨む刑事特別法第2条の規定は、前 に指摘したように何人も適正な手続によらなければ刑罰を科せられないとする憲法第31条に違反し無効なものといわなければならない。」
 判例文の引用が長くなりましたが、日本国憲法に照らして、在日米軍基地の存在が許されないこと、基地内においても日本国民の人権が保障されなくてはいけ ないことを述べています。検察は東京高裁を飛び越えて上告(跳躍上告)し、最高裁は「高度に政治的な問題は、一見明白に違憲でない限り、第一義的には国 会、内閣が、最終的には国民が判断する」と憲法判断を避けて破棄差戻し判決をしました。
 当時の日米両政府は、米軍の駐留は憲法違反だとする伊達判決に驚き、マッカーサー米駐日大使は田中耕太郎最高裁長官と「内密の話し合い」を持つなど、司法の独立を侵す重大な介入をおこないました。
 内藤弁護士のお話を聞いて、日米安保と基地問題が、憲法五原則=(1)国民主権と国家主権、(2)恒久平和、(3)基本的人権、(4)議会制民主主義、 (5)地方自治、を侵害する根源的な問題であることがよく分かりました。憲法記念日を前に、このようなつどいで学習をすることができてたいへん有意義だっ たと思います。

2012年4月29日日曜日

沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい(1)

4月28日、「サンフランシスコ講和条約・日米安保条約発効60年~沖縄と結び、日米安保と日本の進路を考えるつどい」が、東京・明治大学で開催され、190人が参加しました。
オープニングは、東京のうたごえ協議会のみなさんによる演奏。
次に主催者を代表して、日本平和委員会代表理事の畑田重夫さんが開会あいさつをされました。
私が青年の頃、畑田さんが都知事選挙に革新候補として出られたことを思い出しました。ご挨拶のなかで90歳とおっしゃっていましたが、たいへんお元気でした。
講演は、元宜野湾市長の伊波洋一さんが、「いま、沖縄から訴える これからの沖縄と日本、アジア」と題しておこないました。
沖縄復帰から40年にもなるのに、沖縄の米軍基地がなぜ存続し続けるのかについて、日米安保条約の下で日本政府がまったくアメリカに対してものが言えない 実態があること、4月27日の日米両政府による在日米軍再編計画見直しの「共同発表」にあたっては、当初25日に公表する準備をしていたものが、米上院軍 事委員会のレビン委員長らが意見を出したために延期して文書が修正されるなど、まったく日本政府の意図しないところでものごとが決まっていくありさまが話 されました。
住宅密集地にある普天間基地の危険な実態についてはこれまでも聞いていましたが、大型ヘリ墜落事故後に沖縄防衛局が作成した飛行航跡図を見ると、明らかに 普天間飛行場の場周経路をはみ出して住宅地上空を旋回飛行しているのに、国は「場周経路飛行はおおむね守られていると考える」と言っていることには驚きま した。
在日米軍基地は、アメリカの軍事的目的のために好き勝手に使われているのに、「抑止力」という言葉で日本の国民はだまされてきたこと、台頭する中国と米国 の間で「台湾問題」をめぐって軍事的緊張が取りざたされたが、経済的にはアメリカも日本も中国との関係を強めており、軍事的衝突を避ける力が働いているこ とが話されました。2010年11月下旬のNHK日米安保特集アンケートでは、日米安保の将来像について、「日米同盟を基軸にする」が19%に対して、 「アジアの国々と国際的な安保体制を築く」が55%、「防衛力を持たず中立を保つ」が12%を占め、日本政府がおこなっている外交・安全保障政策は、民意 を反映していないことが示されました。
伊波さんは、日本政府が戦争国家アメリカへの従属をやめて、米軍基地を撤去させ、日米平和友好条約を締結する、そういう時期に来ていることを訴えました。

(次回につづく)
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2012年4月21日土曜日

第8回DAYS国際フォトジャーナリズム大賞

先日届いた、DAYS JAPAN 5月号の特集は、「第8回DAYS 国際フォトジャーナリズム大賞」でした。
東日本大震災の被災者と世界各地で人権の危機に直面した民衆の姿がそこにありました。
http://daysinternational.net/jp/category/award/award_2012/

第1位 林典子「東日本大震災 混沌と静寂」

DAYS特別賞 岩手日報社(鈴木多聞、熊谷真也、横田真紀、山本毅、鹿糠敏和、三浦隆博、佐藤光、長内亮介)「東日本大震災 襲いくる津波」

第2位 レミ・オシュリック「リビア革命」 (オシュリック氏は受賞を知った直後、シリアで砲撃にあい亡くなりました。心からご冥福をお祈りします)

第2位 アレッサンドロ・グラッサーニ「モンゴルの環境避難民」

第3位 カイ・レッフェルバイン「ガーナ 若者を蝕む先進国の廃棄物」

第3位 大久保忠司「東日本大震災 まなざしの先に」

第3位 アレックス・マージ「イラク戦争 本当の犠牲者」

審査員特別賞 千葉康由「東日本大震災 津波が消し去った街」
       恒成利幸「東日本大震災 慟哭の海」
       深田志穂「東日本大震災 津波の跡に」
       ミロス・ビカンスキ「ギリシャの経済危機」
       エド・オウ「エジプト 若者とネットの革命」
       アリス・メッシーニス「リビア 最後の戦場スルトにて」
       リサ・ウィルツ「フィリピン スラムの炭焼き場で」
       グエン・デュボウトミュー「コンゴ民主共和国 魔術師にされて捨てられて」
       アティット・ペラウォンメータ「インドネシア 硫黄鉱山の労働者」

 私はこれらの作品を見て、過酷な現実のなかで懸命に生きる人々の姿に大きく心を動かされました。

 審査員講評のなかからDAYS JAPAN編集長・広河隆一氏の言葉を紹介します。
 「選考にあたって、改めてフォトジャーナリストとは何かと考えました。その状況を理解し、それに対して自分が何をできるか、どう責任をとれるかを常に自 問自答する、それがフォトジャーナリストです。昨年は世界中で民衆の動きがあり、アラブ諸国では革命が、日本でも反原発のデモがありました。しかし、そこ にある怒りとか鬱屈を無視して、絵になるところだけを撮るのではその名に値しません。フォトジャーナリストは写真の上手下手で判断されるべきではなく、 「人間の生きる価値」をどこまで理解しているかにかかっています。・・・・(略)・・・・」

2012年3月12日月曜日

東日本大震災から1年 ~かけがえのない“命”~

私は、昨年の3月11日は、東京で開催していた組合の大会中に震災に遭い、帰宅できない参加者の宿舎を探して確保し、本部の男性役職員は事務所に段ボー ルを敷いて一夜を明かしました。その間に、東北地方ではたくさんのかけがえのない命が津波にのまれ、津波から逃れた人たちのなかにも寒空の下で命を落とし た人たちがいました。そしてさらに福島第一原発の重大事故が、出口の見えない放射能汚染の被害をもたらしました。
 私達はこのことを決して忘れないし、今なお続く被災地の困難と被災者の苦しみについて考え行動しなければいけないと思っています。私はこの一週間の仕事の忙しさで、ブログに書き残す言葉を考える時間を持てずにいましたが、いま静寂のなかで思いをめぐらしています。
 大震災と原発事故を受け止め、考えるために、私の手元にある3冊の本を紹介します。
 一冊目は、『命が危ない 311人詩集 -いま共にふみだすために-』(編者:佐相憲一、中村純、宇宿一成、鈴木比佐雄、亜久津歩)です。543頁にお よぶこの詩集は、第1章・こども、第2章・仕事、世の中、第3章・動物、草花と共に、第4章・自死ということ、第5章・病気も老いも生きぬいて、第6章・ 農村、山里にて、第7章・レクイエム、第8章・戦争と平和、第9章・歴史と自由、第10章・考える、感じる、第11章・東日本大震災・津波など、第12 章・原発、第13章・願いと祈り、結びの詩、解説・あとがき、で構成されています。この詩集を買うきっかけになったのは、DAYS JAPAN 3月号の特集「詩と写真による3.11 鎮魂歌から続く世界」を読んだこと。そこに紹介された詩は、詩集に掲載されたものと一部異なりますが、心に響いた 詩人の作品をあたってみました。結城文さんの「3・11」、名古きよえさんの「風にゆれて」、福田操恵さんの「海を見つめる少女」、酒井力さんの「水のい のち 放射能汚染を憂える詩」、どれも津波と原発事故の本質を浮き彫りにする詩人の感性が伝わってきます。そして、未来への希望である赤ちゃんと私達おと なの責任を詠んだ空色まゆさんの「種蒔き」がとてもいいと思いました。
 二冊目は、『これでわかる からだのなかの放射能』(安斎育郎著)です。放射性物質の大気中への飛散と海への流出によって、大気と水が汚染され、植物が 汚染され、すべての動物が放射能被曝の危険にさらされています。放射線量の測定は多くの場所で実施されるようになりましたが、食物に潜在する放射能による 内部被曝については、未知の部分が多いです。小さいこどもを持つ親にとって最大の心配事です。本書では、放射性物質の種類によって異なった影響があること を解説し、健康被害を避けるためにできることを例示しています。原発事故によって飛散した放射性物質は自然界にある放射線とはまったく異質の危険性を持っ ています。自然界の放射線の話を持ち出して心配ないという無責任なことは通用しません。具体的で説得力のある本書が広く読まれることを期待します。
 三冊目は、『人間と教育』73号(編集:民主教育研究所)特集・東日本大震災と日本の教育です。子どもたちを震災から守り、放射能から守るための学校と 教育の課題について考えさせられます。大企業の利益優先の社会は、子どもたちが生きる「地域」をおろそかにしてきました。津波で破壊されてしまった「地 域」を再生する拠点としての学校の役割はとても大切だと思います。そして教育の課題もまた地域社会の再生を軸に、考え直していかなければなりません。
 紹介した3冊の本をざっと斜め読みしただけですが、私は、1冊目に紹介した『命が危ない 311人詩集』の解説として佐相憲一さんが書かれた次の文章が、震災後のいま考えるべき“命”の視点だと感じましたので、最後に紹介します。
 ~「命」には二つの側面があって、一つは物質的な肉体の生命、一つは内面的なこころの生命、です。そのどちらも不安な現代生活と言えましょう。昨今の健 康食ブームは、…(中略)…「高度経済成長」「バブル経済」を経て崩壊したこの国の経済「成長神話」後の新たな価値観の模索、などを反映しているとも言え るでしょう。また、巨大な商業社会で「人と人とのこころのふれあい」の喪失が、苦しい経済状況や教育の荒廃とも相まって、さまざまな「こころの病」を生み だしています。いじめ、児童虐待、ひきこもり、家庭崩壊、正社員になれない若者の自信喪失、過度の競争社会におけるサラリーマンのストレス症状、孤独死、 介護疲れからくる自殺や他殺、など。こうした暗い世の中でも、日々何とか明るく頑張って生きておられるというのが多くの人々の実感かもしれません。「命」 をキーワードにして見つめると、この社会のあり方も根本的に考え直さないといけないのではないかと言わざるをえません。~(佐相憲一「解説1 命の声の詩 集です」から抜粋)

2012年2月17日金曜日

橋下大阪市長は人権侵害の職員思想調査をやめよ

橋下徹大阪市長は、市の職員に対する職務命令として「労使関係に関する職員アンケート調査」を実施しています。しかしその内容は、きわめて露骨に、職員の思想・信条の自由を侵害し、労働組合活動への干渉・介入を意図するものとなっています。
 今日(2月16日)、日本弁護士連合会(日弁連)は、「大阪市のアンケート調査の中止を求める会長声明」を出し、それに先だつ2月14日には大阪弁護士 会が「大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査の中止を求める会長声明」を出して、その違法性をきびしく告発し、中止を求めました。
 私は思います。労働者は、自分の労働力を使用者に売ることでしか生活の糧を得ることができませんから、みんなバラバラにされて競争させられたら、人間ら しく生きる権利を行使することはできないと。労働組合は、労働者が思想・信条の違いを認めあいながら、使用者に不当な扱いをされず、少しでもいい条件で働 くために団結して行動する大切な組織です。
 今回の橋下市長によるアンケート調査には、労働組合への敵意や悪意が潜んでいます。労働者としての権利と基本的人権、民主主義を守るために、直ちに中止すべきです。
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【日弁連】
 大阪市のアンケート調査の中止を求める会長声明

 大阪市は、本年2月9日、市職員に対する政治活動・組合活動等についてアンケート実施を各所属長に依頼した。
 本アンケートは、組合活動や政治活動に参加した経験があるか、それが自己の意思によるのか、職場で選挙のことが話題になったか否か等について業務命令に より実名で回答を求めるとともに、組合活動や政治活動への参加を勧誘した者の氏名について無記名での通報を勧奨している。また、本アンケートは外部の「特 別チーム」だけが見るとされているが、アンケート内容により回答者に対し処分を行うとされている以上、結局は市当局がアンケート内容を知ることに変わりは ない。
 このようなアンケートは、労働基本権を侵害するのみならず、表現の自由や思想良心の自由といった憲法上の重要な権利を侵すものである。
 まず、本アンケートが職員に組合活動の参加歴等の回答を求めていることは、労働組合活動を妨害する不当労働行為(支配介入)に該当し、労働者の団結権を侵害するものであり、職員に労働基本権の行使を躊躇させる効果をもたらすことは明らかである。
 また、政治活動への参加歴や職場で選挙のことが話題にされることを一律に問題視して回答を求めることは、公務員においても政治活動や政治的意見表明の自 由が憲法21条により保障されていることに照らせば、明らかに必要性、相当性を超えた過度な制約である。そもそも地方公務員は、公職選挙法においてその地 位を利用した選挙運動が禁止されるほかは、非現業の地方公務員について地方公務員法36条により政党その他の政治団体の結成に関与し役員に就任することな どの限定的な政治的行為が禁止されるにすぎず、その意味でも本アンケートは不当なものである。
 ところで、本アンケートには、①任意の調査ではなく市長の業務命令として全職員に真実を正確に回答することを求めること、②正確な回答がなされない場合 には処分の対象になること、③自らの違法行為について真実を報告した場合は懲戒処分の標準的な量定を軽減することが、橋下徹市長からのメッセージとして添 付されているが、これも大きな問題である。
 すなわち、アンケートの該当事項が「違法行為」であるかのごとき前提で、懲戒処分の威迫をもって職員の思想信条に関わる事項の回答を強制することは、いわば職員に対する「踏み絵」であり、憲法19条が保障する思想良心の自由を侵害するものである。
 以上のように、本アンケートは当該公務員の憲法上の権利に重大な侵害を与えるものであり、到底容認できない。
 当連合会は、大阪市に対し、このような重大な人権侵害を伴うアンケート調査を、直ちに中止することを求めるものである。

2012年(平成24年)2月16日
      日本弁護士連合会
        会長 宇都宮 健児
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【大阪弁護士会】
 大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査の中止を求める会長声明

 報道等によれば、大阪市は、去る2月9日、大阪市職員に対して、「労使関係に関する職員のアンケート調査」(以下「本件アンケート調査」という。)を、2月16日を回答期限として実施するとの指示を所属長に発したとのことである。
 本アンケート調査は、橋下徹市長の職員への回答要請文書に、「市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回 答がなされない場合には処分の対象となりえます。」と明記されており、職員は、その氏名を表示し、使用者に対して回答をすることが強制されている。
 本アンケート調査は、市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動などについて調査することを目的としているとされる。しかしながら、 地方公務員は、公職選挙法により公務員の地位利用による選挙運動が禁止されるほかは、非現業の地方公務員について、地方公務員法により政党その他の政治団 体の結成関与や役員就任等、勤務区域における選挙運動などが限定的に禁止されているにすぎない。それ以外の場合には、地方公務員といえども、一般国民と同 様に憲法に保障された、思想信条の自由、政治活動の自由及び労働基本権を有している。
 本アンケート調査で回答を強制されている内容は、多くの問題を含んでいるが、とりわけ、次の点で看過することができない。
 第一に、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を侵害する項目がある。
 「あなたは、この2年間、特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動も含む。)に参加した ことがありますか」との質問をし、「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求 めている(Q7)。
 これは、勤務時間外に参加した正当な政治活動や選挙活動の内容についても回答を強制するものであり、それは、当該職員の支持する政党や政治家、政治に関する関心などの回答を求めることにつながり、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を正面から侵害するものである。
 第二に、職員の労働組合活動の自由を侵害する項目がある。
 「あなたは、これまで大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動に参加したことがありますか。」として「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q6)。
 ここでも、勤務時間外に行われた正当な組合活動の内容や参加状況についても回答を強制しており、また当該職員の組合活動への参加意欲や組合への帰属意 識、人間関係を調査するものである。したがって、その回答如何では、使用者からの処遇に影響を受ける危惧を抱く職員に労働組合活動への参加を抑制し、その 組合活動の自由を侵害することとなる。
 また、使用者が正当な組合活動への参加状況を業務命令をもって逐一調査することは、使用者から独立して活動する自由が保障された労働組合の運営に使用者として支配介入するものにほかならず、許されない。
 以上のとおり、本アンケート調査は、大阪市職員の思想信条の自由、政治活動の自由、労働基本権などを侵害する調査項目について職務命令、処分等の威嚇力を利用して職員に回答を強制するものであり、到底許されるものではない。
 したがって、当会は、大阪市に対して、本アンケート調査の実施を直ちに中止することを求める。

     2012年(平成24年)2月14日
      大阪弁護士会
         会 長  中 本 和 洋

2012年1月22日日曜日

アハメドくんの いのちのリレー

今年最初の記事は、去年の8月、集英社から出版された鎌田實さんの本『アハメドくんの いのちのリレー』の紹介です。小学生でも読める大きな文字でしたので、声を出して朗読してみました。途中、熱いものがこみ上げてきて、涙声になりました。
 パレスチナ自治区に住むアハメドくんは、12歳の時にイスラエルの兵士に射殺されてしまいました。脳死状態になった彼の父親は、医師から臓器移植につい て説明を受けます。悩んだ末に臓器提供の決意をした父親を、5年後、鎌田さんが訪問します。平和なパレスチナを実現したいという想いが、父親にアハメドく んのいのちのリレーを決意させたこと、臓器を提供されたイスラエル人とドナーの遺族であるパレスチナ人が家族の絆を結んだことに感動し、鎌田さんはこの本 を書きました。
 武力で平和を築くことはできないこと、民族や宗教が違っても、憎しみをもたらす現実があっても、人と人は分かり合い、愛し合うことができる。全世界に伝えたい実話です。

明 るく平和を好むパレスチナの少年アハメドくんは、12歳でイスラエル兵に撃ち殺されてしまいました。脳死状態になった彼の父親は、病院の医師から、他の患 者への臓器移植の提案をされます。しかし移植される患者は、敵国のイスラエル人かもしれないし、ユダヤ教徒かもしれない・・・・。悩んだ末に父は、臓器を 提供する決意をします。イスラエルとパレスチナの双方に積もる憎しみと悲しみを乗り越える、平和へのたたかいが始まります。武力では平和を築けない。民族 も宗教も違うけど、同じ人間、同じように尊い命。そのことを著者・鎌田實医師は絵本にして世界に届けます。