2012年11月26日月曜日

TPP参加は国をこわす道(2)

 TPPが日本の農業に大打撃を与えることはよく知られていますが、医療や保険に与える影響は、まだあまり知られていないかもしれません。
 そもそもTPP交渉とは何なのか。もともと2006年に発足したシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Economic Partnership agreement)通称P4協定に参加する交渉で、2008年9月、米ブッシュ政権の通商代表部のシュワブ代表が「米国のP4への参加は、将来の米国の国際競争力強化につながり、成長と富をもたらす。特に、現在直面している不確実な時代にあっては、国際貿易の活性化は、米国経済の健全化にとってきわめて重要である」としてP4のすべての分野に参加するための交渉に臨む意向を表明。2009年11月、オバマ政権がTPP参加を表明し、2010年3月から現在のTPP交渉がオーストラリアのメルボルンで開始されました。日本政府は、野田総理の「交渉参加に向け関係国との協議に入る」ことの表明を受け、今年1月にベトナム、ブルネイ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランドとTPP参加に向けた協議を行っています。このなかでオーストラリアとニュージーランドは包括的関税撤廃を日本が認めなければ、交渉参加を認めない立場を表明。米国政府とは2月に協議を行った時、「センシティブ品目の取り扱いについて関税撤廃からの除外があり得るのか」との日本政府の質問に対して、米国政府は「TPPは包括的な協定をめざしている」と一蹴しています。
 米国におけるTPP推進機関は「TPPのための米国企業連合」で、108社の多国籍企業を中心とした企業と業界団体が参加しており、たびたび米国政府にTPPに対する要望書提出しています。全米貿易協議会は「日本は、深く根ざした関税及び非関税障壁を撤廃する約束と政治的意志を示す必要。具体的には、為替の操作、自動車、保険、金融サービス、建設、建築、エンジニアリング、情報通信、医療及び農業を含む」とし、日本がこれまで築いてきた経済のルールや規制などを撤廃させて、アメリカに企業が参入できるように求めています。アメリカには日本のような公的医療保険がなく、個人が民間の保険会社と契約をしており、TPP交渉の参加で日本の医療保険制度が切り崩される危険が生じます。
 こうした問題に危機感を持った日本医師会は、昨年11月に「国民皆保険の堅持、医療の安全と安心の確保が約束されない限り、TPPへの参加を認めることはできない。また、TPP交渉参加の議論をきっかけに、医療の営利産業化を推進する考えが広がることも懸念される」との見解を表明し、3月には「日本医師会はこれまで、政府が、TPPにおいて日本の公的医療保険制度を除外することを明言するように求めてきた。しかしこのことについて政府からいまだ明確な回答はない。……日本医師会は、あらためてTPP交渉参加に反対の立場を明確にすることとした」と表明しました。
TPP交渉参加で、関税を撤廃して農業を破壊し、医療や食料の安全と安心を守っている規制を外すことは、一部の輸出企業が栄えても、根本において日本の国をこわす道です。

0 件のコメント:

コメントを投稿